Interview

2017年10月3日

ITスキルは他業界でどう活きる?

webプランナーのエースからadidasのマーケターへ転身した福田さんの変化とは?

IT業界ではとても身近なwebマーケティング、他業界ではどのような戦略や手法があり、どのように用いられているので
しょうか?ITスキルを駆使しながら他業界で活躍するマーケターにお伺いします。
まずは、株式会社サイバーエージェント(以下サイバーエージェント)からアディダス ジャパン株式会社(以下アディダ
ス)に転職した福田新さん。
福田さんは2011年サイバーエージェント・インターネット広告事業本部のクリエイティブ・テクノロジー局に所属し、
半年でマネージャーに。名だたる総合代理店とのコンペ案件を数々と勝ち取りながら同社のエースとして活躍する中、「ス
ポーツに人生をかけたい!」という想いから2014年にアディダスに転職しました。現在は『adidas Originals』のブラ
ンドコミュニケーションマネージャーとして、デジタルはもちろんマスメディアから店頭イベント、PRまでブランドに関
わるすべてのコミュニケーションに携わっています。
デジタルプランニングのプロフェッショナルを経験した福田さんだからこそ感じる前職と現職の違い、そして前職で培っ
たITスキルの活かし方についてお伺いします!

アディダス ジャパン株式会社

福田 新

2011年4月、株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 クリエイティブ・テクノロジー局に入社。 ソーシャルメディアやデジタルテクノロジーを活用したコミュニケーションプランニングを得意分野とし、大手飲料メー カーや大手通信会社など数多くの案件を担当。2014年4月、アディダス ジャパン株式会社へ転職。現在はアディダスマー ケティング事業本部 Originals Business Unitにてブランドコミュニケーションマネージャーを担当。

“スピード”が命のwebプランナー時代

 

−まずは、前職の仕事についてお教えください。

クライアントの課題に対して、最新のテクノロジーや最新のwebサービスを用いたプロモーションプランを計画・実行していました。
たとえばわかりやすい事例としては某大手飲料メーカーの商品である脂肪の吸収を抑えるお茶のプロモーションとして、東大の研究室が持つ最先端テクノロジーを活用したスマートフォンアプリを展開しました。

 

−大学の研究室?どういうことでしょうか??

当時はスマホの普及率が徐々に増え写真アプリが流行り始めた頃。脂肪の吸収を抑えるお茶の効能を訴求するために、アプリで食べ物の写真をアップするユーザーの行動を活かせないかと考えていました。そんな中、最新のテクノロジーに関する情報を収集している中で、東大のある研究室が食べ物の写真を撮るだけでカロリーを自動計算する技術を持っていることを知りました。「これは面白いぞ!」と研究室に掛け合い、コラボレーションが実現したんです。食べることが大好きなコンシューマーが ①写真を撮るだけでカロリーを自動表示 → ②食べるのは好きだけどカロリーは気になる → ③免罪符的として脂肪の吸収を抑えるお茶を手に取るキッカケをつくる、という訴求です。

 

−前職では最先端技術×世の中の流行の掛け合わせが企画の肝だったということですね。

前職でまず重要視していたことは“スピード”です。常に“ハジメテ”を自分が創り出すことを意識していました。つまり、有益なテクノロジーやコンテンツを誰よりも早く見つけて、クライアントの課題に対するソリューションに繋げることです。人間誰もが“ハジメテ”の体験にはドキドキするもの。誰よりも早く“ハジメテ”を創り出すために、とにかくスピードにはこだわっていました。
一方で、ただ流行に乗るということではなく“ユーザーといかに持続的なコミュニケーションを取るか”も重要です。ただ一過性の話題づくりとしてテクノロジーを使うのではなく、ユーザーの「こんなの欲しかった!」というツボをつくことで“アタラしい”技術が本当の意味で役に立つと考えていました。数々のwebサービスやメディアを運用しているサイバーエージェントだからこそ得られるノウハウを会社の仲間から学びながら、それをクライアントの課題解決に応用できたのも大きかったですね。

 

東京から世界へ、アディダスの360度コミュニケーション戦略

 

−半年でマネージャーに抜擢され大活躍だった中、アディダスへの転職のきっかけは?

僕はほぼ毎週サッカーに観戦にいくほど子供の頃からスポーツが大好きです。日本で一番の広告プランナーになりたい!と思う一方で、いつか遠い将来、スポーツ業界に関わりたいとも思っていました。
そんな中、2020年東京でのオリンピック開催が決まる瞬間を見て、東京で迎える最大のスポーツモーメントに、スポーツ業界のビジネスパーソンとして携わる機会はこれがラストチャンスかもしれないと思い、衝動にかられるようにスポーツ業界への転職を決意しました。

 

−アディダスではどのような仕事をしているのですか?

現在ではアディダスのストリートウェアブランド『adidas Originals』の国内におけるブランドコミュニケーションを担当しています。いわゆるTVCMやデジタルADなどの広告はもちろん、コンシューマーイベントやストア運動施策、PRやSNS運用など…ブランドコミュニケーションに関わるあらゆる施策に携わっています。

いわゆる店頭のウィンドウを飾るキービジュアルなどは全世界で共通のものが使われていますが、それぞれの国で文化やニーズは断ります。日本のコンシューマーに合わせてディテールをローカライズしたり、グローバル戦略に則りながらいかにして日本の市場環境に適したコミュニケーションをとるのかプランニングし、ブランドやプロダクトの魅力を届けています。
特に東京はキーシティーとして、グローバル戦略の中でも需要な役割を担う都市の一つ。ローカルカルチャーを担うクリエイターのコラボレーションを通じて、東京のカルチャーを世界に発信していくのも我々の大事な仕事です。

 

前職と現職での戦略の変化は?ITスキルはどう活きている?

 

−現在様々な手法でプロモーションを行う中、webをどのように活用していますか?

今は、webはあくまで一つのツールとして捉えています。あらゆる手段を用いてコンシューマーとブランドの接点を総合的に企画しているのでwebのみで何か完結するということはほぼありません。
逆に言えば、どんな施策でも必ずwebやデジタルが関わってきます。毎週、毎日、毎時のように新しいニュースが飛び交う中で、コンシューマー響くのは“最初で”“最高”のニュースだけです。特にストリートファッションの世界では、昨日はクールとされていたものが、次の日にはすでに消費され尽くされていることも珍しくありません。ソーシャルポストでもムービーコンテンツでも、コンテンツの大小に関係無く常にクオリティ高いコンテンツを、適切なタイミングで、そして一度だけでなく継続的に届け続けられるよう心がけています。

 

−現職と前職を比較して、マーケティングについての戦略や考え方に変化はありましたか?

前職の頃よりも、より一層いかに“直接的な体験”を届けられるか、を考えるようになりました。人間は目で見たものはほとんど忘れてしまうけど、実際に身をもって体験したことは記憶に残りやすいとよく言われます。 webは一瞬で情報拡散するために必要なツールですが、コンテンツが溢れている分、一つのコンテンツに対する接触時間はどうしても短くなってしまいます。アディダスにとって、3日後に忘れているかもしれない1万人をつくるよりも、一生心に残る50人をつくる方がブランドの価値になっていくと思っています。
イベントに来ていただいた方がとても楽しそうな表情をしていたり、意外な場面で驚かれていたり…オーセンティックなブランドを担っているからこそ、ただネットで話題になるだけではなく、ひとりひとりに忘れがたい深いブランド体験を届けられることを重視するようになったのが大きな変化だと思います。

 

−一方で過去の経験はどのような場面で活きていますか?

人の動きやトラフィックを考えたプラン設計は、デジタルエージェンシーの経験が活きていると思います。何か一つの施策を点で行うのではなく、あらゆる活動が連動して最終的な売上に繋がるという基本的なプラン設計は、エージェンシー時代にリンク構造やユーザーのトラフィック設計をしていたからこそ、今でも緻密なユーザーの導線設計を心がけています。

 

ミッションによってインプット方法を変える

 

−前職も現職も、世の中のニーズや情報を知ることがポイントとなると思いますが、どのようなインプット方法をしているのですか?

前職では、日本国内はもちろん海外も含めた様々なニュースサイトや広告系メディアをとにかく毎日チェックしていました。世の中の面白いことをインプットして引き出しを広げておくと、ふとした瞬間にアイディアに繋がるタイミングがあるんです。かなり長い時間をかけてチェックしていたのですが、自分の興味範囲だったので特に仕事とは思わなかったですね。

ただ最近はニュースを読むこと以上に、街で起こる現象に意識を向けるようになりました。週に1度は必ずadidasの店舗や取引先様、競合企業の店舗に足を運びお客様の様子を伺ったり、店舗のあるエリアを歩いて人の流れや街の変化を観察します。文字情報で現象を追うのではなくて、街の変化や人々の行動を実際に目にすることによって、より実感としてのインプットを重視するようになりました。

 

−ミッションが変わり必要な情報も変化したということですね。

現在のキーワードはもっぱら“体験”です。例えば、とあるアプリが何百万ダウンロード達成!というwebニュースにはあまり興味が湧かないのですが、電車の中で両隣の人が同じアプリを使っている方が世の中に広まっている実感がありますよね。

最近驚いたのは、地震があった時にadidas社内のメンバーがすぐにAbemaTVで地震速報を見ていたことでした。いろんなニュースや友人の話からAbemaTVの広がりはもちろん耳にしていましたが、緊急時にテレビでもTwitterのタイムラインでもなくAbemaTV を一番に開くユーザーの姿を目の当たりにして、AbemaTVの広がりを改めて実感しました。そういうリアルな体験が口コミを呼び、サービスが浸透していくのではないでしょうか。

 


 

福田さんは前職で培ったITのスキルを一つの武器としながら、より広い視野でのマーケティング戦略と手法を実践していました。

福田さんの目標は、アディダスのマーケットシェアを上げていくことももちろん、スポーツをする人々やストリートファッションを楽しむ人を増やしていくこと。

「自分が初めて履いたアディダスのスパイクのことは今でも覚えています。『IMPOSSIBLE IS NOTHING』のコミュニケーションや、2006FIFAワールドカップに合わせて展開されたアディダスのCM『+10』も強烈に印象に残っています。同じように、アディダスの事を記憶に刻める体験を、今度は自分自身が作れたら最高だと思います。一過性の流行やトレンドではなく、一生心に残るような強烈な体験や思い出ーーそんなブランド体験を作れたら、これ以上に幸せなことはありません。歴史があるグローバルスポーツブランドにいるからには、アディダスのブランドに貢献し、何か足跡を残したいと思いますね。」と真剣な目で語る福田さんは、必ずアディダスのブランド展開に偉業を成し遂げるに違いありません。

取材・文石根 友理恵

グラスタweb編集長。87 年広島生まれ。神戸大学国際文化学部卒業後、IT業界の道へ。2011年サイバーエージェント→2012年ワンオブゼムを経て、2015年より独立。webメディア運営・執筆と日本アジアドラマ共同制作プロデュースという異なる2つの事業に従事するパラレルキャリアを実施中。17年5月に第一子を出産、「仕事と子育てを自分らしく営む」が人生のテーマ。
http://mamawork.life/