Interview

2017年9月27日

目まぐるしいインターネットの世界で日本一の挑戦を続ける

ユナイテッド・井上怜の人生を決めたアメフトと仕事

井上さんは現在、本職と同時に、母校のアメリカンフットボール(以下アメフト)チームのコーチを務めており、なんと昨年チームを全国制覇へ導いた凄腕コーチ!
『日本を代表するインターネット企業になる』という会社のビジョンのもと、新規事業を生み出す企業文化づくりに熱心なユナイテッド。このビジョンの実現は、井上さんご自身が掲げる目標の達成にもつながるのだとか。その原点には、20年前の井上少年が出会うべくして出会い、今日までの歩みを共にしてきた、アメフトが大きく関わっていました。

ユナイテッド株式会社 コーポレートカルチャー本部 副本部長

井上怜

ユナイテッドの前進となる、株式会社エルゴ・ブレインズに2007年の新卒として入社し、営業職のキャリアを歩む。2015年に企業文化の醸成・浸透を目的に新設された、コーポレートカルチャー本部に採用育成部門のマネージャーとして異動。総務や広報と管掌範囲を広げ、2016年6月より現職に。

アメフトで掲げた “日本一”の目標を社会人の自分に引き継ぐまで

―井上さんは、母校の高校でアメフト部のコーチをされており、昨年初の日本一に導かれたとか。

はい。昨年12月に行われた全国大会に出場し、初優勝しました。今年6月に開催された関東大会でも10年ぶりに優勝し、ますます弾みがかかっているところです。

―素晴らしい戦績ですね。井上さんご自身は、どのくらい練習に参加しているんですか。

大会が始まると、土日あわせて20時間くらい参加しています。選手は練習を終えると帰宅しますが、コーチ陣はその後も、「どうやって戦うか」「どの選手をどのポジションに配置するか」を喧々諤々と話し合っています。

―アメフトは、激しいプレイに目が行きがちですが、その裏では緻密な頭脳戦が展開されていると聞いたことがあります。

僕は、合理性と専門性のスポーツだと思っています。たとえば野球なら自分がバッターとして、あるいは野手としてどう動くのかを考えますが、アメフトは、自分を一つのパーツとして捉え、全体のなかでどう動くのかを考えるんです。チーム内でも役割が分かれ、論理的に無駄の無い動きを求められます。また、ポジションも細分化し、一人一人の責任範囲が明確になっています。組織は縦割りなユニットと、チーム全体を横串でつなぐユニットがあり、戦略や戦術を考えるときも全体を俯瞰する必要があります。かなり頭を使うのですが、プレイ自体は格闘技。そのギャップがまたおもしろいですね。


選手のプレイを真剣なまなざしで見守る井上さん。

 

―アメフトは、どういう経緯で始めたのですか。

中学入学を機に始めました。まったく未経験のスポーツだったので不安はあったのですが、戦略を考えることがすごく楽しくて。勉強はからっきしダメでしたが、アメフトの戦略は親から「早く寝なさい」って叱られるくらい、のめり込んで考えていました。また、プレイ人口が少ないので、自分が活躍できる可能性を感じられたんです。実際、高校2年生のときに全国大会に出場し、大学ではキャプテンも務め、最終学年では関東大会ベスト6でシーズンを終えました。

 

現役時代のプレイ姿。アメフトは、ポジションごとに背番号のルールが存在するのだそう。井上さんは高校/大学と『5番』をつけ、今でも『5番』に愛着があるという。

 

―現役時代の活躍も素晴らしいですね! 社会人になって選手を続ける選択肢はなかったのでしょうか。

僕は体格が大きくないので、このまま選手を続けることに迷いがありました。一方で現役生活10年間で一度も日本一になれなかったことが心残りで……。だったら働く中で一番になろうと、体格差など関係のない“社会”というフィールドで、自分の力を試すことに向かっていきました。次は職場でリーダーシップを発揮し、日本一を目指そう、と。
コーチになったのは、アメフトによって人格形成がなされた者として、アメフトに恩返しがしたかったんです。それで、母校の高校生をコーチとして指導することになりました。

 

こうしてアメフトのプレイヤーとしての自分に踏ん切りをつけた井上さんは、ユナイテッドの前進となる株式会社エルゴ・ブレインズに入社し営業職を続けましたが、その後転機は30歳で訪れました。企業文化の醸成を目的に新設されたコーポレートカルチャー本部にて、採用育成部のマネージャーに抜擢されます。

 

コーチ業と人材育成の仕事はとてもよく似ている

―営業から一転、現在は採用育成をはじめ、組織づくりが業務の中心とのことですが、アメフトコーチ業の経験が仕事に生かされていると感じることはありますか。

大いにありますね。コーチ業、仕事ともに得た気づきを両方で生かしています。たとえば、アメフトで優秀な成績を上げている中学生をスカウトすることは、企業の採用と似ていますし、活躍できる選手に育てる部分は、人材育成と同じです。
人の成長を考えしっかり向き合う先には、成績や業績が付いてきますし、これらの成果を出すことが組織をつくり、文化を形成していくので、優秀な人の呼び水にもなります。

―いま、企業文化の話も出ましたが、コーポレートカルチャー本部を設立以降、企業文化の醸成に向けて特に力を入れている取り組みはありますか。

新規事業を生み出す施策に力を入れています。それも一つ二つではなく、複数を同時に走らせています。たとえば、社員誰でもが参加可能な施策があります。『マサSEEK(マサシーク)』は、注目されつつあるサービスやビジネスモデルを共有するイベントとして、『マサCAMP(マサキャンプ)』は、社内で積極的に新規事業アイディアを交換し、議論するための合宿として、それぞれ行っているのですが、『マサSEEK』で得たヒントを基に自分で練ったアイディアを『マサCAMP』で提案してみる、というように連動もしています。これらは社員誰でもが参加可能な施策ですが、これら以外にも、執行役員と各事業責任者が新規事業の種を持ち寄り議論する『最高の種会議』を実施したりもしています。新規事業を生むためには、色々な角度で日々挑戦し続けることが大切です。その文化を社内に根付かせることはもちろん、実際に立ち上げていく過程もサポートできるよう、さまざまな視点から新規事業にアプローチしやすい環境を整えています。

―ユナイテッドでは、一定以上のマネジメント層、もしくは連結グループ各社で同等の実績がある社員を対象とした、社内起業支援制度『U-start』という制度もあります。『U-start』の事例としては、アイドル応援アプリ『CHEERZ』を運営する、グループ会社のフォッグ社が実績を挙げており、社内外の期待も高いのではないでしょうか。この取り組みからも、ユナイテッドが新規事業にかける本気度を感じます。

IT業界は一つの事業が3年5年と続いていく環境にありません。だからこそ、次の柱となる事業を矢継ぎ早に生み出す必要があります。そして、事業の成功率が低いぶん、どんどん打席に立つことも重要です。内定者に新規事業立ち上げを任せたりすることも同じ理由です。バッターは多いほど良いですから。事業の創出者は役員も新卒も関係なく、その取り組み自体を大切にしています。

 

—一方で、福利厚生も充実しているイメージです

誕生月の社員にブックコーディネーターが選書した書籍を贈る『レコメン堂』、プレミアムフライデーがスタートする以前から取り組んでいる、毎月1回金曜日が全社午後休となる『金曜どうしよう?』など、当社ならではの福利厚生がいくつかあります。
これらのすべての施策は、ビジョンである『日本を代表するインターネット企業になる』に基づいており、実現のためにいまの会社に必要なことを日頃から考えた結果、生まれているものです。現在の当社が注力しているテーマは、「生産性の向上や創造性を育むこと」。たとえば、『レコメン堂』の目的もこのテーマに紐づいた上で、役員が誕生月社員をランチに招待する『GOラン!』と、社内図書コーナー『Yondle?(ヨンドル)』を結びつけた施策です。

—どのように結びついているのですか?

業務の課題を本で解決しようと思ったとき、当社はビジネス書以外の書籍がもたらす刺激が創造性の向上に寄与することもあると考えていますので、ブックコーディネーターに依頼して、絵本や哲学書など様々なジャンルの書籍を『Yondle?』に並べています。
一方の『GOラン!』ですが、もともと夜に開いていた食事会を昼に変更した際、プレゼントとして本を贈る案が追加で出てきました。そこで、アンケートを用意し、対象者の回答によって、今気になっている事象に合った本をブックコーディネーターに選んでもらって渡すことにしたのです。二つの制度を掛け合わせることで『レコメン堂』ができました。
このように、行うからには主目的を達成するだけではなく、一石二鳥になるよう考えたり、副次的効果をねらったり、ネーミングにもこだわったりするようにしています。この掛け合わせが、“ユナイテッドらしさ”として受け取られているのかな、と。

社内図書コーナー『Yondle?』は、リラクゼーションルームの一画に設置されている

 

一つひとつは、ピースとして独立したものでありながら、全てはビジョンの実現というストーリーに集約されたユナイテッドの各施策。これらを有機的につなげ、会社の骨子として浸透させていく点は、井上さんが寝る時間を惜しんで考え続けた、アメフトの戦略に近いものがあるのかもしれません。

大切なのは、チャンスに気づき、チャレンジを続けること

―最後に、IT業界で働く人に向け、メッセージをお願いします。

日々感じているのは、IT業界には常にチャンスが転がっているということ。特に若い人は、デジタルネイティブ世代として育っているぶん、課題やアイディアをたくさん持っていると思います。ですが、目まぐるしい業界であるがゆえ、それらを自分の内に閉まっているあいだに機会を逸してしまうこともあるんじゃないかと。それって非常にもったいないので、新しいチャレンジは果敢にやっていきたいですよね。
加えて、僕は中学高校の恩師や当社の役員陣など、人との出会いに恵まれました。自分よりも視座の高い人と接することは、人生を豊かにするうえで重要なことではないでしょうか。僕自身も出会いに感謝しながら自分を磨き続けることで、今後の成長につなげていきたいと思っています。

 

ユナイテッドが大切にしている要素の一つに、『No.1志向』があるといいます。
「これを体現し続けた先には、アメフト選手の時代から追い続けた、『日本一』がある」。
そう力強く話す、井上さんの眼差しは、目まぐるしいインターネットの世界のなかにいながらも、『日本一』という確かな目標を、ときにワクワクしながら、ときに冷静に見据えているかのようでした。

取材・文香川 妙美

1980年、山口県出身。音楽業界での就業を経て、2005年より自動車関連企業で広報に従事。2013年、フリーランスに転身。カフェガイドの企画・執筆を振り出しに、現在までライターとして活動。学習情報メディア、広告系メディア等で執筆するほか、BtoBライターとして各種制作物を手掛ける。スタートアップを対象に広報コンサルタントとしても活動中。