interview

2016年6月13日

音楽オタクから DeNA 最年少執行役員 へ

それでも現場でプロダクトを作り続ける赤川さんの仕事道(前編)

IT仮面 ・第2回は、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)モバイルソーシャルインキュベーション事業部・赤川隼一さんにお話を伺いました。
赤川さんは、新卒1年目でマネージャーに抜擢。その後も、「Yahoo!モバゲー」立ち上げ、DeNA Seoul(韓国子会社)立ち上げ等を経験し、28歳で最年少執行役員に就任しているスーパーキャリアの持ち主です。しかし、「プロダクトを作りたい」という想いのもと、執行役員を自主退任し、現在は新規サービスの開発に没頭する日々を送っています。そんな赤川さんの仕事感は、やはりストイックでプロフェッショナル。
静かで落ちついた外見とは異なる、情熱に満ちた赤川さんのこれまでの人生をご紹介します!

DeNA

モバイルソーシャルインキュベーション事業部

赤川 隼一

1983年生。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、2006年DeNAに新卒入社。広告営業・マーケティング・企画マネージャー職を経て、2010年「Yahoo! モバゲー」を立ち上げ、2011年6月まで同事業責任者。2011年5月、DeNA Seoul立ち上げ。2012年1月より社長室長、同4月より執行役員として海外事業、プラットフォーム戦略、ゲーム第一本部を管轄後、2015年3月に執行役員を退任。事業プロデューサーに戻り、2015年8月にスマホ画面共有型のライブストリーミングサービス「Mirrativ」をリリース、目下グローバルで立ち上げ中。

 

(Mirrativ)
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.dena.mirrativ
iOS:https://itunes.apple.com/jp/app/id1028944599

 

社長に給料UPを直談判!?負けず嫌いで生意気な若手時代

 

石根:DeNAで新卒1年目からマネージャー、さらに28歳で最年少執行役員に就任した赤川さん。学生時代もやはり優秀だったのでしょうか?

赤川:いえ、大学時代はバンドとレコード屋巡りに全てをかける音楽バカでした。
音楽関係に就職しようと、まず今は音楽フェスで有名なロッキング・オンの採用試験を受けたんです。当時は「(自分は)同世代で1番音楽に詳しい」という勝手な自負があり、まさか落ちるはずがないと、履歴書の記入欄からはみ出す勢いの小さな文字で音楽を熱く語りました。しかし、読みにくすぎたせいかまさかの書類選考落ち…。仕事の難しさを感じた最初の瞬間でしたね(笑)。
そして、初めて行った企業説明会がたまたまDeNAでした。経営陣のエネルギッシュな姿やスピード感に惹かれて入社を決めました。

石根:ロッキング・オンとは意外です(笑)。入社後、まずはどんな仕事をしていたのですか?

赤川:入社後は、まず営業としてアフィリエイト広告を売っていました。注力サービスだったので、いきなり最初の上長から「赤川が未達だったら株価が落ちるから気をつけて」というプレッシャーがきて…。右も左もわからないまま、営業マンとしてキャリアをスタートしました。当時携帯ゲームの広告出稿はほぼなかったのですが、『Mobage(当時はモバゲータウン)』が始まった年だったので「これからはゲームが伸びるはず」と思い、東京ゲームショーで100枚ほど飛び込みの名刺交換をして毎日クライアントに通いつめました。結果、売り上げは上がり、1年目でマネージャーになりました。

石根:1年目でマネージャーだと、チームメンバーも年上ですよね。

赤川:そうなんです。マネージャーの心得もない僕が、いきなり先輩をマネージメントするのは難しく、チームは崩壊寸前になりました。悩んだ結果、“指示する”というスタンスではなくて “協力しあう”というスタンスに変えたんです。例えば、資料を自分で作成して、メンバーに好きに活用してもらったり、チーム目標を可視化して全員で追いかけるよう促したり。数字だけではなく、「とにかく達成したいからチームで協力しよう」という想いを共有するスタイルにした結果、少しずつ改善されていきました。

石根:なるほど、若手マネージャーとしてはすごく参考になるお話です。今振り返ると、赤川さんはどんな若手社員だったのですか?

赤川:とにかく “負けず嫌いの生意気者”でしたね。1年目に広告営業で成果が出た時、飲み会の席で酔っ払って、当時取締役だった守安さん(現在は代表取締役社長兼CEOの守安 功)に「売り上げ出してるんだから、もっと給料上げてくださいよ。」と直談判していたらしいです(笑)。この話は結婚式のスピーチで守安さんに暴露されました(笑)。僕がそうだったので、今でも負けず嫌いで生意気な若手は大好きですね。
あとは、僕は特に “やりたいこと”が明確ではなかったので、人事の責任者に「僕が一番成長できて成果を出せそうな部署に配属してください」とお願いしていました
“やりたいこと”が見つかっている人はそこに真っ直ぐ向かうのが1番ですが、そうでないなら、成長できる環境の中で組織や人を全力で助けて、自分を育てていけばいいと思っています。

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若手時代に培ったプロフェッショナル思考

 

石根:その時は、大好きな音楽のサービスをやろうと思わなかったのですか?

赤川:実は当時、DeNAという環境で3年ほど経験を積んだ後、またバンドでもやろうかと思っていたんですね。そしたらバンドマンでも食いっぱぐれないかなって(笑)。その頃、ちょうどマーケティングの部署に異動して、初日に飲み会の席で上長の池田さん(現在は横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長の池田 純)にその話をしたら、「明日から来なくていい」と言われてしまい…。「プロフェッショナルに対しては本気で教えるけど、覚悟のない奴に教えることは何もない」と一蹴でした。この言葉がかなり効いて、改めて本気度を上げ、より真剣に仕事に取り組むようになったんです。僕の基本的な仕事感は、池田さんに教わったんですよ。

石根:どのようなことを教わったのですか?

赤川:たくさんあるのですが例をあげると、1つ目は、“入口から出口まで全部考える”ということです。
物事は規模が大きくなるほど細分化しがち。例えば、広告担当者はバナーのクリエイティブやCPAチェックに追われ、バナーのことしか考えられなくなることがありますが、大事なのは、自分たちが扱うサービスは何で、どのようなニーズがあり、どう使われ、最終的にその人の人生にどんな影響を与えるかということです。そのサービスの一連のストーリーを考えた上でバナーを考えるのか、バナーのクリック率が上がるという観点だけで考えるのかで完成度がまったく異なります。
なので、DeNAでは、マーケターもプロデューサーも役職も関係なく、サービスにとって良い改善は全員が意見を出し合います。当時の僕も、マーケティング担当の枠を超えて、サービス上の企画にどんどん踏み込んでTV-CMとサービスを連動させる、というような動きをたくさん経験しました。

2つ目は、“生活や体験のすべてがビジネスのヒントになる”ですね。
例えば、ある企業のCMにタレントが出演している際、なぜこの企業はこのタレントをアサインしているか、このCMによって何を伝えたいかなど、一連の仮説を持てるか否かがプロフェッショナルの境目だと教わったんです。
人生に起こることすべては何らかの形で仕事にフィードバックできるという感覚ですね。日常的なSNSの使い方や子どもの写真を撮ることですら、ビジネスのヒントになるという考え方をしています。

石根:なるほど…。例えば子どもの写真はどうつながるのですか?

赤川:最近「Snapchat」にはまっていて、子どもの動画を撮って起業家の友達と送りあっています。「Snapchat」自体はずっとアメリカで流行っていたので、これまで何回も理解しようと試したのですが、どうしても理解できなかったんです。でも、子どもの動画の送りあいをはじめてから、「Snapchatの本質は、動画を撮ってシェアするまでのタップ数を最小にする、というユーザビリティだ」ということに気づいたんですね。おそらく、嫌々使っていたら分からない発見でした。
日常の何気ない習慣や動作には、全てに意味があり、ヒントが隠されているーそれを見逃さないように、常に意識しています。

 

 

—————インタビューここまで

 

DeNA新卒時代から、成功と失敗を繰り返しながら、プロフェッショナルな仕事感を積み上げてきた、ストイックな赤川さん。後半は、最年少執行役員になる過程、そしてそれを捨ててでも取り組む新規事業に対する想いをお伝えします。

取材・文石根 友理恵

グラスタweb編集長。87 年広島生まれ。神戸大学国際文化学部卒業後、IT業界の道へ。2011年サイバーエージェント→2012年ワンオブゼムを経て、2015年より独立。webメディア運営・執筆と日本アジアドラマ共同制作プロデュースという異なる2つの事業に従事するパラレルキャリアを実施中。17年5月に第一子を出産、「仕事と子育てを自分らしく営む」が人生のテーマ。 http://mamawork.life/