「IT仮面vol,2 音楽オタクからDeNA最年少執行役員へ それでも現場でプロダクトを作り続ける赤川さんの仕事道(後編)

IT仮面・第2回前半では、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)モバイルソーシャルインキュベーション事業部・赤川さんに、音楽オタクだった学生時代から、若手時代の様々な経験を経て、プロフェッショナルな仕事感が培われる過程をお伺いしました。

その後も、「Yahoo!モバゲー」や韓国の現地法人DeNA Seoulの立ち上げ、最年少で執行役員などを経験された赤川さん。様々なご経験の中で、何を思ってきたのでしょう?そして、現在のお考えは?赤川さんの人生にさらに迫ります。

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(プロフィール)
DeNA モバイルソーシャルインキュベーション事業部
赤川 隼一(あかがわ・じゅんいち) 
Twitter: @jakaguwa

1983年生。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、2006年DeNAに新卒入社。広告営業・マーケティング・企画マネージャー職を経て、2010年「Yahoo! モバゲー」を立ち上げ、2011年6月まで同事業責任者。2011年5月、DeNA Seoul立ち上げ。2012年1月より社長室長、同4月より執行役員として海外事業、プラットフォーム戦略、ゲーム第一本部を管轄後、2015年3月に執行役員を退任。事業プロデューサーに戻り、2015年8月にスマホ画面共有型のライブストリーミングサービス「Mirrativ」をリリース、目下グローバルで立ち上げ中。

(Mirrativ)
Android:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.dena.mirrativ
iOS:https://itunes.apple.com/jp/app/id1028944599

 

■「Yahoo!モバゲー」立ち上げ・海外子会社立ちあげ・最年少執行役員〜チャンスを逃さずひとつずつ形にする赤川さんの仕事術

石根:赤川さんは、新卒5年目で、大規模な事業提携をご経験されたとか。

 

赤川: はい。ヤフーさんと提携して、PCでソーシャルゲームが楽しめる「Yahoo!モバゲー」というサービスを立ち上げました。入社4年目の2010年3月頃に交渉を始めて、4月末に合意、それから約半年後の10月に正式にサービスを提供開始しました。

 

石根:構想から半年でリリースとは、爆速ですね…。どんなエピソードがあったのですか?

 

赤川:”熱量が事業・人を動かす”ということを体感しました。交渉中は夕方に先方と打ち合せをして、すぐオフィスに戻って内容を作り直して。その日のうちに先方の担当者と電話でまた議論を再開して、法務の担当者にも隣に座っていてもらって契約書やリスク観点をその場で修正して、また翌朝には新たな提案をしに先方のオフィスへ伺う、といった交渉でした。
ヤフーさんも「若造の提案だ」と斜に構えるようなことは一切なく、真剣に向き合ってくださいました。当時は無我夢中でやっていただけですが、結局どんな大きな事業も、”絶対にやりとげる”という熱量を持って動くことで信頼関係ができて、初めて前に進めることができるんだなと。
当時のヤフーさんの責任者は、現社長の宮坂さん(ヤフー株式会社 代表取締役社長の宮坂 学氏)で、今でもお付き合いがあります。飛び道具に頼るよりも、ひとつひとつの仕事に精一杯取り組んで誠実にやっていくことで、結果的には信頼関係が長く続くし、実は最良の長期投資になるということを実感しています。

 

石根:ひとつひとつを積み上げることが1番の成功法ということですね。その後、どのような経緯でDeNA Seoulを立ち上げたのでしょうか?

 

赤川:『Yahoo!モバゲー』の開始から約1年が経ったころ、経営陣に「韓国のモバイルゲーム市場がかなり伸びてるらしいですよ」という話を立ち話的にすると、「赤川、韓国の件、責任者で考えて。1ヶ月以内に提案して。」というメールがぴょこっときたんです。2行のメールです(笑)。
さらにその翌日、南場(DeNA創業者で現在は取締役会長の南場智子)から「いま韓国のお客様と会っているからちょっと来てよ」という電話があり、会議室へ向かうと韓国企業のVP(Vice President)クラスの方で。僕が着くなり南場は先方に僕の事を「He is in charge of Korea!!(彼が韓国進出の責任者です)」と紹介すると、「後はよろしく」といった感じで部屋を出て行ってしまったんです。「Bye!」とか言って(笑)。

 

石根:ええ(笑)!?通訳はいらっしゃったんですか?

 

赤川:いえ、そして僕は留学経験も特になく、英語が流暢に話せるわけではありませんでした。でも、責任者になったからには「目の前にいるこの人とまずは仲良くなって次の突破口を見つけねば」と必死にコミュニケーションをとりました。しかも、その時は韓国に行ったことが1度もなかったので「僕は韓国好きです、行ったことないけど」「ちょうど1度行こうと思ってました!」という風に(笑)。必死に拙い英語で話すことで仲良くなり、韓国視察の際には彼からまた別の紹介を受けたりして、とてもお世話になりました。

 

石根:すごい…無茶振りからのチャンスを形にするのがDeNA式なんですね。

 

赤川:当時、僕は「Yahoo!モバゲー」も責任者として伸ばしていたので、ゴールデンウィークに韓国へ飛びました。帰国後すぐに経営会議の議題にあげて、その場で韓国に現地法人を立ち上げることが決定しました。設立はその経営会議の約1ヶ月後でした。この後、全社で海外事業をどんどん拡大していく時期だったのでアメリカや中国の話も増えていって、翌年の4月に海外展開の責任者という形で執行役員に就任しました。28歳の時です。

 

石根:意思決定のスピード感がケタ違いですね…。執行役員として、どのようなことをされていたのですか?

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 赤川:アメリカ、中国、韓国の3拠点でのプラットフォーム事業推進です。日本も含めて横断的に統一すべき部分と国ごとに最適化する部分の戦略整理や買収した会社とのカルチャーの融合、他にもアライアンスの交渉を一気に進める時にはフロントに立つこともありました。守安(DeNA代表取締役社長兼CEOの守安 功)の右腕としてとにかく “勝つ”ために必要だと思ったことは片っ端からやりました。この時期は、GoogleやSamsungのようなグローバル企業のすごさや、シリコンバレーのスタートアップのダイナミズム、あと日本人って内向きなだけで超優秀じゃんという気付きなど、経験として得るものが沢山ありました。それが今の「自分で事業をやるなら絶対にグローバルで勝負できるものを」という考えのベースになっています。その後、日本のMobageの業績が落ち込み始めた際、仕事内容を完全に切り替えて、Mobageの内製ブラウザゲームの立て直しをすることになりました。

 

石根:立て直しの時期は、スマホゲームが台頭した時期ですよね。かなり難しい立て直しだったのではと思うのですが、実際どんなことをしたのですか?

 

赤川:僕はゲーム運用の経験があったわけではないので、実際にやったことは、ほぼ“抜擢”のみですね。やる気に満ちたポテンシャルのある若手メンバーを責任者に抜擢していきました。月間の売上が数十億にのぼる巨大事業ですが、そもそも歴史的に新しい事業だし、実績があれば年齢は関係ないよなと思いました。
なので、強い想いを持つメンバーを中心に、チームをドライブしてもらう体制に変えたんです。アプリの開発に人材をシフトしていく必要もあったので、売上規模に対してチーム人数は徐々に減っていくのですが、「それでも売上を維持する」ということをむしろ粋に感じるような奴らですね。半年スパンの売上目標を決めて、それに向かってチーム一丸となって計画を遂行していく。そうするうちに次のリーダーが芽を出してくるので、前のリーダーには活躍の場をアプリに移してもらったりしつつ、また抜擢する。この新陳代謝を重視していました。
世間の「トレンド」はアプリだとしても、「とんでもない規模の事業、DeNAの根幹の事業を自分達が回しているんだ」という「誇り」みたいなものを持ってもらうことをとにかく意識しました。実際むちゃくちゃすごいことですからね。世界中を見渡しても、20代であの規模の事業を中心になって回してる人たちなんて本当にレアなので。

 

石根:赤川さんは28歳と若い時に執行役員に就任していますが、ご自身の中で変わったことはありましたか?

 

赤川:良くも悪くも気を張ってましたね。背伸びした分いろんな経験ができたという側面と、無理をしていた分、実力以上の意思決定をしてしまう場面も少なくなかったと思います。立場に気張らずにわからないことはわからないと言える、というようなことが本当に重要だなと今振り返ってみて思います。

3年ほど執行役員としてやっていたのですが、どうしても形にしたい事業ができて、執行役員は2015年3月で辞任しました。今は、サービス開発にフォーカスして、サービスに必要なもの以外は考えないという仕事になっています。

 

■ひとりじゃないスマホライフを〜「Mirrativ」にかける想い

石根:執行役員を辞任してまで取り組むサービスとは?

 

赤川:「Mirrativ(ミラティブ)」という、2タップでスマホの画面ごとライブストリーミングができるコミュニケーションサービスです。「Mirrativ」を通して、 “コンテンツ”と “コミュニケーション”のバランスをもう一回変えたいと思っています。

あらゆるコンテンツは、コミュニケーションを前提に消費されてると考えています。例えば、映画を観てる時も「隣で観てる好きな子はどう思ってるのかな?」と考えたり、映画が終わったら「どんな感想をツイートしようかな?」と考えていたり。写真を撮ってInstagramにアップするためにディズニーランドに行く、みたいな流れも最近はありますよね。
一方で、スマホ時代になって、逆に体験はパーソナル化しがち。「ゲームでうまいプレイができて嬉しいんだけどその興奮が周りに伝えられなくてちょっとむなしい」というような瞬間も増えています。そんなスマホ時代に、コンテンツを中心に置いて話題が広がり、新しい出会いや体験ができるサービスが「Mirrativ」だと思っています。

コンセプトは「ひとりじゃないスマホライフを」です。開発中もチームにずっと言っていた目指す像は、「友達の家でドラクエやってる感じ」。ドラクエは一人用のゲームですが、なぜか友達の家でやっていた、という経験ありますよね。ゲームが部屋の真ん中にあって、基本的にはみんな後ろでマンガを読んだり好きに過ごしてるんだけど、ボスとのバトルになるとテレビの前に集まってわいわい言い合ったりする。ドラクエというコンテンツを中心にゆるいコミュニケーション空間が生まれている、そういう世界観をスマホで再現することをイメージしています。

また、「Mirrativ」では、スマホをインターネットに繋ぎっぱなしにすることで、新しいコミュニケーションの常識を作りたいと思っています。スマホの画面を常に晒すのはプライバシー的に危ういのではないかという見方もあります。でも、Facebookが台頭するまではネットに実名を晒すのは非常識だったし、LINEのスタンプが出るまでは、「デコメ(デコメール)」は女子高生しか使わないものだと思われていました。この5年10年だけでも、インターネットのコミュニケーションの常識は塗り替えられてきました。「Mirrativ」も、常識を変えてグローバルで大きく勝ちたいなと思ってフルコミットでやっています。

 

目の前にあるやるべき道”を突き進む

石根:赤川さんは、佇まい・お話の仕方などとても冷静沈着なイメージです。しかしこれまでのご経験は、熱血な出来事の連続ですね。

 

赤川:自分としては、「正しいと思った方向にまっすぐ突き進む」という感覚です。方向を間違うと何をやってもダメだし、方向が正しくてもゆったりしているとすぐに負けてしまうのがこの世界。事業交渉もサービス立ち上げも、譲れない部分と妥協する部分を高速で考え、形にすることが大事だなと思っています。冷静と情熱の間を生きる感じですかね(笑)。

 

石根:ありがとうございます。では、最後に、IT業界若手人材へ、メッセージをお願いします。

 

赤川:今僕たちは、人類史上最もダイナミックな“変化の時代”に生きています。ほんの20年前までインターネットは一般的なものではなかったし、スマホやSNSが当たり前になったのもここ10年の間です。今は、少人数でつくったものが数十億人に使われる可能性が事実としてある時代です。そんな時代に生きていることは非常にエキサイティングな事です。

その中で、今やりたいことが見つかっている人は、まっすぐそれをやりきればいい。逆にやりたいことが見つかっていない時は、全力で人を助けるのが良いと思います。人間には時機や周期もあります。「今」やりたいことがないことは、別に恥ずかしいことでも何でもないです。目の前にあるやるべきことをやる、誰かのやりたいことを本気で助ける、その過程で、自分が本当にやりたいことが自然と見えてきたり、ふとした時に自分自身の成長が実感できたりするはずですから。

 

—インタビューここまで。

 

 

赤川さんの人生は、「目の前にあることを全力でやりきり、次のステップへ進む」ことの連続だったようです。
冷静と情熱をまとい、新たなコミュニケーション革命を起こそうとする赤川さんは、今後も先導者としてIT業界に偉業を残して下さるでしょう。

 

取材/執筆 石根

 

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