IT仮面vol,5『モンスト』のマーケティングをゼロから創ったミクシィ・田村さんの緻密すぎる思考(後編)

日本が世界に誇るスマホアプリ『モンスターストライク(以下モンスト)』のマーケティングを支えてきた田村さん。前半では、リリース後〜CMを実施する初期段階での『モンスト』マーケティングの考え方・手法をお伺いしました。

その後も様々なマーケティング手法を試行錯誤しながら規模を拡大させ、『モンスト』は現在世界で3,500万人のユーザーがプレイするゲームへと成長しました。その過程において、どんな思想や戦略があったのでしょうか?
様々な挑戦を続け、確かな結果を出し続ける『モンスト』マーケティングに迫ります!

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株式会社ミクシィ XFLAG™スタジオ XFLAG ENTERTAINMENT 部長 田村 征也さん
(元・株式会社ミクシィ XFLAGスタジオ マーケティング部長)

 

■宣伝担当がたった2人からのスタート…思考錯誤を繰り返し築いたCMの 形

石根:初めてのCMを実施した2014年3月、『モンスト』の宣伝担当はたったお二人だったとか。

田村:そうなんです、初期のCM撮影は苦労しました…。その中でも最も大変だったのが、CM映像に使用するプレイ動画の撮影でしたね。
今でこそプレイ動画が簡単にとれる撮影環境になっていますが、当時はそんなもの存在しなかったんです。その上で、モンスターやキャラクターが飛ぶ角度はもちろん、フルHDでしかもマルチプレイ画面で撮らねばならず。ひらすら会議室にこもり、手動で端末を何台も動かしながら撮影していました。2〜3秒のシーンを撮るだけなのに、条件どおりのプレイ動画が撮れるまで、丸1日かかりましたね。朝方もう諦めたかけていた時に思い通りのシーンがとれて、感無量でした…(笑)。

石根:同じ画面で24時間、少しでも設定条件がずれたらやり直しですよね…想像しただけで気が遠くなります…。

田村:その経験があり、「作業しやすい環境をつくる」と決めて、撮影環境や通信環境を整えました。今では初期に24時間かかっていた作業は一人で30分もあれば撮影することが可能です。

石根:すごい、48倍の効率化ですね(笑)。『モンスト』のCMはいつも強烈なインパクトですが、特に『モンスト』以外の様々なキャラクターが、「こんなことするの?!」という意外な展開を見せるクリエイティブがとても印象的です。

田村:当時、一般的にコラボは「IPを借りる」という考え方が主流。しかし、我々の場合はあくまでもメインは自社キャラクターで、借りたIPを全面に出すという考え方はほぼありませんでした。しかし、せっかくのIPを活かさないと、これまで『モンスト』を知らないユーザーに「やって見よう」と思って頂ける機会を逃してしまうと思ったんです。そこで、逆転の発想として、前面にIPを押し出す戦略をとりました。

石根:私はラスカルのコラボCMがすごく好きでした。ラスカルが飛んでいって、スターリンが舌打ちするCMです。

田村:まず第1弾として行ったのが、ラスカルとのコラボ。その後、2014年8月にLINEコラボを実施しました。
LINEコラボのCMはモンスト初TVCMのパロディになっていて、LINEキャラクターをメインに構成しました。LINEキャラクターが教室でモンストをマルチプレイし、ストライクショットでキャラクター自身が飛んでいくという内容です。
LINEキャラクターコラボCMを何本か制作しましたが、どのCMもLINEキャラクターをメインに自社CMのパロディで構成しました。

石根:コラボCMについては、IPを押し出すこと以外に意識している点はありますか?

田村: “話題性”ですね。つまり、『モンスト』だけでは出来ないコラボならではの展開で話題を生むことです。
例えば例えばエヴァンゲリオンやウルトラマンとのコラボCMでは、アニメシーンや曲を使わせて頂きました。まさにコラボでしか出来ない展開で、「あのCMみた?」という話題を生むことが重要だと考えています。各社様とてもご理解頂きコラボCMが誕生しているので、本当に感謝しております。

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■様々なチャネルを駆使してユーザーに “体験”を提供する

石根:『モンスト』はCM・オンライン広告のみではなく、イベントやグッズ、アニメなど様々なチャネルを通して多面的なプロモーション展開をしていますが、どういった戦略なのですか?

田村:基本的にはすべて『モンスト』に触れる機会を増やすという意図です。その上で詳細な考え方はそれぞれ違いますね。
まずイベントに関しては、ユーザーさんに宣伝では伝わらないリアルでの体験を通して、さらに『モンスト』のファンになって頂きたいと思っています。
リリース1周年記念として初めてユーザーご招待のイベントを開催した際、もの凄い応募を頂き、当日のイベントもとても盛り上がりました。その熱量をより醸成するべく、自社リアルイベントやニコニコ超会議でのブース出展、闘会議でのe-sports展開など、リアルな場でユーザーがモンストに触れることのできる機会を増やしています。2016年9月25日には「XFLAG PARK 2016」という完全招待制のイベントを開催し、足をお運びいただいたたくさんのユーザー様に楽しんでいただくことができました。

石根:グッズ販売に関してのお考えはいかがでしょう?

田村:イベントでの体験をグッズという “思い出”として持ちかえって頂くという考え方で販売しています。だからその時にしか手に入らないイベント限定グッズも毎回作ってるんですよ。

石根:まずCMで印象を残し、オンラインでDLを促し、イベントを通してユーザーの熱量を上げ、グッズ販売によりユーザーの密度を上げるというサイクルを繰り返す、ということですね。

田村:そうですね。あとは「友達を誘いやすい」ことがポイントです。CMもイベントも、『モンスト』を知らない方でも楽しめる内容を重視しているんですよ。グッズも『モンスト』を強く押し出すのではなく、デイリーユースできるデザインを心がけています。例えば今日着ている服もグッズなんですよ。

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石根:え!このTシャツですか?!『モンスト』感がまったくないですね!

田村:『GUILDPRIME』というファッションブランドさんとコラボして販売しているTシャツです。『GUILDPRIME』のイメージを崩さずにモンストの要素を少し追加したデザインですね。
これも、ファッション好きのユーザー層を取り込むことを目的として、コラボによる話題づくりを形成しています。

 

■3DS・アニメまで展開!?

石根:『モンスト』はさらにニンテンドー3DSのソフト販売、YouTubeでのアニメ展開と、さらに手広いマーケティングを行っています。特にアプリゲームからコンソールでのソフトを開発するのは珍しいですよね。

田村:ニンテンドー3DSは小学生くらいの若年層がターゲットですね。スマホの普及率は増加しているものの、小学生がゲームで遊ぶときは、現在も3DSがとても人気なんです。そういった方々に『モンスト』を遊んで頂くために、2015年12月に3DSソフトを発売しました。
また、3DS発売とほぼ同じタイミングでアニメ放送を開始しました。

アニメ・モンスターストライク。2016年12月には映画も公開される。

石根:アニメはYouTubeのみ公開というまた珍しい展開ですが、どういった意図があるのですか?

田村:スマートフォン時代の新しいアニメ展開を試みています。通常TV放送のアニメは30分枠での放送ですが、「モンストアニメ」は約7分〜10分の尺とし、YouTubeのみで公開しています。テレビのように正確な尺を決めなくてもいいので、各回「ここまで展開した方が次回が気になる」というタイミングに合わせて尺を決めています。また、アニメの中に謎解きを入れ、謎をとくと『モンスト』スマホアプリでアイテムがもらえるという、アニメtoゲームという展開もしています。
謎解きも、再生と停止を繰り返すことができたり、スマホを逆さにするとヒントが分かるなど、スマホならではの操作によって解読できるという要素も含めています。

石根:まさにメディアミックス戦略、アニメを見ることがゲームに繋がるんですね。

田村:そのタイミングで3DSソフトを発売したんです。3DSソフトとアニメの主人公は同じ設定なので、ソフトを購入したユーザーにアニメを見て頂けるようになり、アニメの視聴率もぐっと上がりました。アニメからゲーム、ゲームからアニメとユーザーが入ってきて、両者影響しあうという循環ができ、ありがたいことに3DSソフトは出荷数100万本を達成しました。

 

■ “コミュニケーション”を第一にする田村さんの仕事観

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石根:これまでのお話をお伺いしていて、『モンスト』マーケティングの大胆な発想力や緻密な企画力に驚きを隠せません…。どういった方法でこのような戦略を考えているのですか?

田村:まずは競合他社研究や市場調査を入念に行い仮説を立てます。ここまでは一般的な方法ですが、『モンスト』では “逆の発想”をします。つまり、常識を疑い、今までになかった方法はないかを考えるんです。
その過程においてまずは、“コミュニケーション”を設計します。つまり「我々はユーザーに何を伝えたいのか、ユーザーにどのように感じてほしいのか」ということを考えるんです。よくインターネットサービスは “人”が見えづらいと言いますが、結局は人と人との関係と同じだと思うんですよ。例えば、「こういうアプローチで驚かせたい」と施策をうつと、ユーザーからの反応がSNSを通じて返ってくる。想い通りの反応にならなければやり方を見直し、反応が良ければより磨きをかける。それは人と人とのよりよい関係性構築のコミュニケーションと一緒ですよね。
また、どんな施策でも「友達と一緒に遊べる」というコアバリューを徹底的に伝えていくことを決めています。なのでどんな企画会議やブレストも、コアバリューに近づけるというためにどうするかという考え方の軸ができていますね。

石根:とはいえ、メンバー全員が共通の考え方を理解するのは難しいですよね。なにか気をつけていることはありますか?

田村:考え方を伝える際には、『モンスト』を人格化するようにしています。クラスで例えると、イケメンや真面目な学級委員長から、たくさんのキャラクターがいる中、『モンスト』はいわゆる三枚目キャラで、お調子者のムードメーカーのような存在。どんな行動をとればそんなキャラクターになれるか、という考え方ですね。
石根:なるほど、具体的でイメージしやすいですね!

田村:一方で、これも一つの方法論に過ぎません。人に物事を伝えたい時は、結局「いかに相手の立場に立って物事を考えるか」が最も大事ですよね。メンバーであろうとユーザーであろうと、それぞれ異なる環境にいる中で、コミュニケーションによって相互の考えを紐解いていき理解しあうことで、はじめて”伝える”土壌ができますから。なのでメンバーとは、意識共有のためにできる限りたくさんの対話を重ねています。

石根:”伝える“プロである田村さんだからこその仕事観、恐れ入りました…。では最後に、今後の挑戦をお教えください!

田村:世の中に新しい価値を提供し続けたいですね。XFLAGとしてもそういう新しいエンターテインメントの形を追及していきたいと思います。
XFLAGのミッションは「友達や家族とワイワイ楽しめる“アドレナリン全開”のバトルエンターテインメントを創出し続ける」こと。どのようなアプローチで提供していき、新しい価値に変えていくことで、今ないものを沢山世の中に生み出せる仕事に繋げていきたいです。

————-インタビューここまで—————-

 

前編・後編にかけてお伝えした『モンスト』マーケティング全容、感想はまさに「大胆かつ緻密」でした…。世界の『モンスト』を支える思考がそこに存在しました。
次はどんなあっと驚くものを世の中に生み出すのでしょうか、楽しみでなりません!




 

 

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