IT仮面vol,5『モンスト』のマーケティングをゼロから創ったミクシィ・田村さんの緻密すぎる思考(前編)

2013年のリリース以降世界的なヒットとなり、今や圧倒的な地位を築く『モンスターストライク(以下モンスト)』。ゲーム運用はもちろん、CMや動画・OOH広告・イベントなど様々なチャネルを用いて、独自性のあるクリエイティブを駆使したマーケティングを行っているのも大きな特徴です。
そして、今回お話をお伺いするミクシィ・XFLAG スタジオでマーケティング部長の田村さんは、『モンスト』リリース前からプロモーションを担当し、ゼロからその礎を創ってきました。

『モンスト』には、どのようなマーケティング思想が存在し、どのような手法を経ているのでしょうか?『モンスト』マーケティングの第一人者、田村さんにお話をお伺いしました!

 

xflag_1株式会社ミクシィ XFLAGスタジオ XFLAG ENTERTAINMENT部長・田村征也さん
(元・株式会社ミクシィ XFLAGスタジオ マーケティング部長)

 

■スーパーマーケターは芸大卒?!デザインとマーケティングに共通する思想

石根:まずは田村さんのご経歴をお教えください。

田村: 2009年に新卒でミクシィに入社し、『mixi』 のメディア営業やアプリのコンテンツ開拓、アライアンスを経験しました。
2013年、『モンスト』リリース前よりマーケティング担当となり、2016年7月まで『モンスト』に関わるマーケティングの統括をしていました。そして今年8月より、リアルイベントやライツビジネスを促進する新規事業を統括しています。

石根:田村さんの経歴はビジネス職ですが、学生の頃は芸大でデザインを学んでいたとか。

田村:はい、学生時代はグラフィックデザインと映像制作を学んでいました。

石根:芸大卒業後、デザイン職ではなくビジネス職に進むことは珍しいですよね。学生時代学んだことは今に活きていますか。

田村: “今ないものをどう創るか”という発想はとても活きています。
僕は “デザイン”とは、何かの課題解決や誰かの役に立つために、「あったらいいな」と思うものを形にしていくことだと考えています。デザインを学んでいる時は、「これは役にたつのではないか、面白いのではないか」という仮説を立ててものを創るというプロセスを行っており、現在もこの考え方を用いることが多々あります。
実務面では、例えば色味による印象が把握できたり、絵コンテから映像の仕上がりがイメージできたり、クリエイティブコントロールを一気通貫できることは自分の大きな強みになっていると思っています。

石根: “今ないものをどう創るか”。何をするにも大事な思想ですね…。ちなみに、学生時代はどのような作品を創っていたのですか?

田村:例えばスポーツメーカーとコラボして東京デザイナーズウィークに出展した時は、「東京で遊ぶ」という抽象的なお題が出てあとは自由に発想するというものだったのですが、その時は、「今ないスポーツをつくろう」というコンセプトで、サッカーに似た新しいスポーツを自分たちで作り通勤でバトルするという映像を制作しましたね。
今振り返るとこの時は、抽象的なものに未来を描き、必要性を持たせるという発想の訓練をしていたと思います。

石根:とはいえ、入社後それまでの環境とはまったく異なる営業職配属、正直とまどいませんでしたか?

田村:ミクシィは多様性を認める文化が浸透しているので、一概に営業職といってもそれぞれのやり方を認め合っており、自分のスタイルを持っていれば何ら問題ありません。また、僕は営業からコンテンツ開拓、マーケティング職と様々な職歴を経ており、その度全く違う挑戦ができました。多様性を認める文化のもと、成功体験を掴むチャンスがたくさんあるところがミクシィの良い文化ですね。

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■『モンスト』マーケティング初期:口コミと動画でファンを創る

石根:では、気になる『モンスト』マーケティングについてお伺いしたいと思います!CMやイベント・OOH広告など様々なチャネルを駆使しサービスを広げる『モンスト』ですが、それぞれの方法の中に「ここは譲れない」という軸はありますか?

田村:「対面して友達と遊べるゲーム」というコアバリューをしっかり押し出していくことですね。一緒に遊ぶ人が多ければ多いほどゲームの魅力が増幅されるといるうゲーム設計になっているので、そのコアバリューをしっかり伝えていくことで、結果的にインストールは増えていくと考えています。ですので、マーケティング初期から現在まで、コアバリューに沿わない選択はしないです。

石根:2013年リリース初期は、どのようなマーケティングを行っていたのですか?

田村:実はリリース当初は、ほぼプロモーションを行っていないんです。ほぼ口コミでユーザーが増えていきました。

 石根:あえて口コミによる広がりを狙ったのですか?

田村:はい。始めから広告を用いて一気ユーザーを獲得するより、自然に人が集まってくることが一番の価値だと考えていたので。
当時はリワード広告(※1)が主流でしたが、『モンスト』はユニークユーザーを獲得したかったので、広告を使ったブースト施策は当時からいままで1度も行っていません。人が人を呼び、ユーザーが徐々に指数関数的に伸びていくことを狙いました。
結果、事前登録と友人招待による拡散で、リリースから2ヶ月たらずで100万ダウンロードを達成できました。

※1・・・アクセスしたユーザーに報酬の一部を還元する仕組みを持った広告。無料ランキング上位に掲載するために有効な手法だった。

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石根:ほぼ口コミで100万DLとは驚異的…。100万DL達成後、次の手として何をしたのですか?

田村:2014年1月より、マックスむらいさんとモンストYou Tube上でモンストニュース等の動画コンテンツを始めました。むらいさんの人気もあり、開始後ユーザーが激増し、2ヶ月で300万DLを達成したんですよ。

石根:動画マーケティング大ブレイクの火付け役は、まさに『モンスト』といっても過言ではないですよね。配信までどのような経緯があったのですか?

田村:マックスむらいさんより動画チャンネルを一緒にやろうという話を頂き、「どういうアプローチをしたら最もユーザーさんに届くだろう」と模索していました。そして、他社では”中の人”としてプロデューサーが多々出演する中、『モンスト』ではユーザー側に立った立場の人が出演した方がユーザーと近い距離でコミュニケーションできるんじゃないかという結論に至り、『モンスト』チームのさしみさんが出演することになったんです。
その結果が今の、さしみ・さなぱっちょ・ぱなえ・りえっくすという、ユーザーに支持を頂ける“中の人”に成長していきました。

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「モンスト公式」YOUTUBEチャンネルでのさなぱっちょ・ぱなえ

 

石根:皆さんものすごい人気ですよね。XFLAGの中の人のTwitterフォロワー合計数100万人を超え、もはや芸能人ですよね。

田村:そうですね、しかし彼女たちの仕事は決して動画出演することに特化しておらず、一人の社員であり一人の企画者です。ですので、自分たちで動画のコンテンツを企画し、現場しきりも自分たちで行う、まさに自己プロデュースするというスタイルなんです。

石根:なるほど・・・。企画者としてよりよい映像を思考するからこそ、よりユーザーが支持する動画が生まれるのかもしれませんね。動画マーケティングについて、その他戦略はありますか?

田村:皆で遊んでいる様を見せることです。当時のゲーム動画は画面いっぱいにゲームを見せることが主流でした。しかしモンストは「対面で友達と遊べる」がコアバリューですので、それを知ってもらうため、ゲームの進行具合よりも皆でわいわいしながら楽しくプレイする姿をユーザーに見てもらうことが重要だったのです。
また、コンテンツの質で勝負することです。『モンスト』チャンネルでしか出せない情報を、自分たちで制作した動画で配信しユーザーに伝える。ユーザーは動画を毎回楽しみに待っていてくれる。その循環が続けば、『モンスト』の動画メディアが自然と形成されると考えています。

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■『モンスト』初めてのCM舞台裏

石根: 動画ももちろんですが、『モンスト』といえばCM。どのCMも強烈なインパクトで、記憶に残るものばかりですよね。

田村さん:ありがとうございます。マスプロモーションで最もこだわった点は、やはり「友達と遊べる」というコアバリューの訴求です。最初に制作したCMでは皆で遊んでいる様子をしっかり映すため、あえてゲーム画面を全面に押し出さず、学生4人が放課後集まってモンストをプレイしており、ストライクショットを放つと1人が飛んでいくという、インパクト勝負のCMに仕上げました。

石根:このCM、覚えています!一目見てすごく印象に残りました。

田村:このCMでは、コアバリューを伝えるのが目的ですが、CMを見た次の日教室で「あのCM見た?面白いよね!」とモンストをきっかけとしたコミュニケーションを生みたいという意図もありました。「コミュニケーションのきっかけになるコンテンツをCMとして投下することによって、口コミがさらに加速する」という仮説は正しく、CM実施後DLが急増しました。 “人が人に伝えたくなる”ようなCMを作り、コミュニケーションの後押しになる設計をすることがCMのポイントとなっています。

『モンストCM』帰りたくない編

 

石根:やはりCMもコンセプトを軸に凄く緻密に考えられているんですね。しかしあのクリエイティブを生み出すためにとても苦労したのでは…?

田村:そうですね、当時初めてCMを実施した時は、宣伝担当は僕含め2人しかおらず…。

石根:え?!たった2人ですか?!!

田村:そうなんです。ですので、始めのCMはかなり苦労しました。当時はゲーム画面の撮影環境も整っておらず、途方にくれるような作業をしたりもしました。それからも試行錯誤を繰り返し、現在では撮影環境も整い、スムーズにCM制作ができるようになっています。

 

—————前半インタビューここまで−−−

前半では、『モンスト』初期段階のマーケティング手法をお伺いしましたが、すべて「友達と遊べる」というコアバリューを軸に緻密に考えられているものばかり。
後半では、初めてのCMでの苦労話・・・そして様々なチャネルを駆使したクロスプロモーションを仕掛ける、さらなる『モンスト』のマーケティングの思考と手法に迫ります!

 

 

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