【社長対談 カヤック✖グラニ】成長し続けるための組織作り

本誌『Grand Style』では、IT業界の名だたる経営者の方々に、仕事感や人生観を伺ってきました。

今回は、面白法人カヤック代表取締役CEO・柳澤さんと、株式会社グラニ代表取締役社長・谷さんに、“組織の作り方”について語っていただきました。

※この記事は、2014年9月発行『Grand Style』2号掲載コンテンツを編集したものです。

 

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(右)面白法人カヤック 代表取締役 柳澤大輔

1974年香港生まれ。慶應義塾大学 環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをwebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に発信する。ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給)や、ワークスタイル(旅する支社)を発信し、「面白法人」というキャッチコピーの名のもと新しい会社のスタイルに挑戦中。

 

(左)株式会社グラニ 代表取締役社長 谷直史

1977年生まれ。愛知工業大学 工学部 建築工学科卒業後、29才まで建築業界にて設計士を務める。30才で上京後、2011年に株式会社GMS(現株式会社gloops)に入社し、プロジェクトマネージャー&ディレクターを務める。2012年、同社を退社し、株式会社グラニを設立。

 

■カヤックを通過点に!?カヤック流・退職者との関係

谷:今日は、会社の組織作りについてお話できればと思っています。グラニの社員数は100人強。100人は1つの節目、今後は社内の組織構築を第一に考えたいと思っているんです。

 

柳:なるほど。事業が伸び続けている限りは、そこに必要な人材を増やし続けることが必要ですよね。しかし、本当に大事なのは、事業がある程度成熟した時。事業の伸びが止まり、さらなる新規事業を生み出さなければならない時に、それを担いうる人材や、成長し続けるための文化が組織の中で重要になってくると思います。

 

谷:会社経営は、一定の期間に勢いよく業績をあげることはできても、10年、20年続けていくのはすごく難しいことだと思うんです。カヤックさんは創業からもう数十年経っていますが、どうやって経営を続けてこられたのですか?

 

柳:一言で言うと、“蓄積”に尽きます。会社は、蓄積されて積み上げられていく資産があるといいと思うんです。それはお金だけではなく、人やブランドなども含まれます。カヤックの場合は、面白法人という言葉ですかね。この言葉に対して価値が蓄積されるように意識してきました。

 

谷:まさに、うちが今課題としている企業ブランディングですね。でも、“面白さ”とは、蓄積するには難しい部類ですよね。

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柳:そうなんです。面白くなくなった瞬間、積み上がったものが一気になくなりますからね(笑)。しかし、敢えてそこにチャレンジしてきました。あとは人の蓄積ですね。転職や独立をする社員がいつつも、会社としての規模は大きくなり、現在に至ります。

 

谷:そこも気になっていたんです。カヤックさんのHPで退職者インタビューを拝見しましたが、どのような意図で掲載されているんですか?

 

柳:退職することは悪いことじゃないという考えは、創業の頃から文化としてありました。カヤックで成長し、会社も社員もお互い活性化して、辞めた人も含めてカヤックという生態系で捉えようと思っているんです。

 

谷:たとえば、退職した人が競合他社に行ってしまう場合もありますよね?

 

柳:そうですね。ただそれは社会に面白さの総量が増えると捉えることもできますし、まぁそれで本人が楽しく働いていれば良いと考えています。ちなみに、退職者をここまでオープンにするようにしたのは数年前からです。それまでは競合他社に転職するというのはそれほど多くなかった。しかし、ゲーム業界に参入してからはすごく人材の流動性が高くなったので、むしろそれを逆手にとって公開しようという発想になりました。つまり、むしろ退職者目線で、カヤックはどんな会社で、入社するとどんな業務や経験が積めるといったことを客観的に語ってもらうことで、カヤックのアピールを促進し、採用に繋げようと考えました。また、退職者もどんどん支援して、カヤックを通過点にしても良いかなと。臭いものにフタをするという選択肢はとらず、社員が退職する際も、激励されて出て行くような関係を作ろうと心がけてきました。

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(カヤックの退職者インタビュー)

 

谷:なるほど。カヤックを通過点に…面白いですね。

 

柳:関係性を良好に保つことができれば、長い目で見ると、良い会社の在り方の1つだと思います。それに実際、自分が社員だったら、いろいろな会社を見てみたいという気持ちもわかりますしね。

 

谷:今のお話を伺うと、うちの※「一生働ける会社にする」という経営理念は柳澤さんのお考えと真逆と言えるかもしれません(笑)。

※現在の経営理念は「一生勝ち続ける」。メッセージ性は同様。

 

柳:いや、それは素晴らしいです。たとえばカップルが「一生愛してる」って言い合っていたとすると、実際には一生愛し続けるというのはそうそうないと思うのですが、そうそうないからといって言わないというのも寂しい話で、少なくとも当人同士は心から信じて言っているのであれば、そう言い切る。そしてそういう理想を追求することに価値があり、そういう素直な気持ちは素晴らしいですよね。

 

 

■「居酒屋をやっても成功する」グラニ流・チームの作り方

谷:先ほど、蓄積のお話をされましたが、僕は、一緒に切磋琢磨して成長してきた仲間と、どんどん次の段階へステップアップしていきたいと思っています。基本的に、僕は、根っこがゲーマーで効率厨なので、前回得たものは必ず次に活かし、常にグレードアップしたものをつくっていきたいと思うんです。ですので、せっかく自社で成長してきた人間がいなくなってしまうことは、そこにかけた労力とコストが消えてしまい、本望ではないと思ってしまいます。もちろん、本人が本当にやりたいことがあるなら、応援しますが。

 

柳:それはその通りですね。ノウハウの蓄積されたメンバーとともに事業をつくっていきたいです。ちなみにカヤックでは、会社全体で採用を活性化させる目的で、「ぜんいん人事部化計画」というプロジェクトを行っています。多くの社員が”会社をつくる”側に携わることで、人材を蓄積していくという意図です。

 

谷:やはり“人”ですよね。仮に今200億円手にして、一生遊んで暮らせる状況があっても、すぐに飽きてしまうと思うんです。それより僕は、共通の話題にああだこうだ意見し合える仲間と同じ価値観で同じ時間を共有し、充実した人生を過ごしていきたい。そういう思いでグラニを立ち上げ、「一生働ける会社にする」という理念にしました。

 

柳:なるほど。次にステップアップしてつくりたいものとは?

 

谷:これまでの経験を活かし、国民的大ヒットのゲームをつくるというのが直近の目標です。まずは国内でもっと成功させ、それをベースに海外展開も視野に入れています。

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(グラニの大ヒットをかけたゲームは2016年夏リリース予定。事前登録はこちらから)

 

谷:ただ、すごく長期的な話でいうと、極論、ゲームでなくてもいいと思っています。たとえば、急に「居酒屋作ろうぜ」という話になったとしても、そこにちゃんとマーケットがあり、流行る理由があるならやればいいと思うし、そうなっても成功できるような応用力の高いメンバーを集めようと思い、採用しています。トレンドは絶対変わっていきますし、数年後に今のソーシャルアプリのノウハウが何の意味もなくなる可能性も十分にあります。そんななかで、汎用性・柔軟性がないと“一生働ける会社”になんてできないですからね。

 

 

■良いものづくりを生むのための実践法

谷:カヤックさんの経営理念は「つくる人を増やす」ですが、つくる人というのは、クリエイターということですか?

 

柳:クリエイターももちろんそうですが、この“つくる人”の解釈は各自がどう捉えるかで変化すると思っています。僕の場合は、結構幅を持たせて考えていて、「つくる人=主体性がある人」と捉えています。つまり自分が受け身じゃなくて、つくる側にまわる、そういう人が増えればいいという意味で使っていますね。ただ、うちは経営理念を何度か変えているんですよ。これまでに4回くらいは変えましたね。

 

谷:4回も?どういったきっかけやタイミングで変えられたんですか?

 

柳:まずは、組織の人数が増えて足並みが揃わなくなってきた時ですね。その場合は、もう一度理念を見直し、ドライブを掛け直します。もう1つは単純に自分のクリエイティブ力の向上が理由です。僕は24才で会社を始めて、16年間ずっと広告的な仕事をしてきましたが、コピーや言葉に対する感度や使い方が変化していくのは当然で、そうすると今まで書いていたものが急にダサく見えてきたりするんですよ。「もっといい言葉があるのに」と。そう思った時に、より言葉をブラッシュアップする意味で変えますね。

 

谷:会社やご自身がどんどん進化されているということですね。では、今の理念も変わる可能性があるんですね。

 

柳:あるかもしれないですね。ただしばらくは「つくる人を増やす」、そういう文化をつくっていきたいと思っています。

 

谷:その意識を根づかせるために具体的にされていることってありますか?

 

柳:テクニック的なところではやっぱりブレインストーミングですね。ブレストはカヤックの文化として頻繁に実施しています。ブレストをすることで、自然と“つくる側”の意識が生まれていくんですよ。

 

谷:それは興味深いですね。

 

柳:カヤックだけではなく、他のコミュニティでもブレストの力はすごいなと感じたんです。ITを使って鎌倉で面白い活動をする人を支援する「カマコンバレー」という団体を立ち上げたのですが、そこで月1回、ブレストをしているんです。最初は皆そんなに多くのアイデアが出なかったんですが、1年半続けているとポンポン意見が出るようになったんですね。やはりブレストに向き不向きはないと実感しました。そして、ブレストが活発になってくると勝手に手を挙げる人が出てきて、自然と作り手にまわる意識が生まれてくる。ここでもう一つ面白いのが、普段の会話まで不思議とブレスト風になってくるんですよ。たとえば、普段飲んでいて愚痴を言うような場面で、「アイツひどいよね」ではなく、「アイツはどうやったら良くなるか」という話になるんですよ。なんとかしてアイデアを出そうってなるんです(笑)。

 

谷:それは面白い、というかすごいことですね。

 

柳:はい。そういう意味で、ブレストは組織を活性化させていく上で汎用性のある手法だという気がしています。グラニさんは普段社内でブレストってやりますか?

 

谷:ちゃんとしたルールでのブレストはそこまで促進していません。ゲーム運営では常に新しい機能やイベントが求められるので、そういう意味では常にブレスト的なことはしていますが。僕がよく社員に言うのは、今、世の中で流行っているものに目を向けろということですね。

 

柳:ファンの気持ちを知れと。

 

谷:面白いものを作るためには、面白いとされているものを知ることから始まるので。僕も、時間が許す限り流行りを実際に体感し、なぜ面白いとされているのか、なぜユーザーが楽しんでいるのか自分なりに仮説を立て、折を見て社員に共有しています。

 

柳:最近体験した面白いものはなんですか?

 

谷:最近だと『妖怪ウォッチ』ですね。ゲームもやっていますし、アニメも見ています。

 

柳:子どもにすごく人気ですよね。子ども向けのものも、実際にご自身で遊ばれるんですね。

 

谷:結構、先入観を持たずに素直にハマれる性格なんですよね。グッズも買って、ジバニャンのぬいぐるみを枕元に置いています(笑)。

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柳:ほんとですか。それはハマってますね(笑)。谷さんのようなコアゲーマーでも楽しめるゲームなんですか?

 

谷:たしかに僕自身はコアゲーマーなんですが、妖怪ウォッチを小学生の気分になって楽しんでいます。触れるものによって気持ちをリセットできるのは、僕の特殊能力なのかもしれません(笑)。柳澤さんは、面白いものをつくるために普段からしていることはありますか?

 

柳:うーーーーん…。特にないですね(笑)。新規サービスは基本的に現場から生まれていますし。

 

谷:そうなんですか!?意外です。では、休日は何されてるんですか?

 

柳:休日・平日の概念があまりないかもしれません。土日に仕事が入っている場合もあるし、平日もSkypeなどで事足りることもあるので、必ずしもオフィスに出勤するわけではありません。

しかし、大切にしているのは、代表の僕自身が常に“面白がる” “面白そうにしている”ことですね。社員から「なんか柳澤楽しそうにしてんな」って思ってもらえれば、それは組織のカラーや雰囲気にも繋がるでしょうし。

 

谷:なるほど。役割を明確に意識されてるんですね。

 

柳:人間、時間が限られているなか、全ての物事をこなせるわけではありませんから、自分にとって何が一番大事かを考えて、その本質になるものを1つ選べばいいと思っています。

 

谷:休日と平日の境目があまりないとおしゃっていましたが、ある意味、プライベートと仕事をそれほど分けていないということですよね。それは社員にも推奨されているんですか?

 

柳:それも自由ですね。どちらでもいいと思っています。メリハリをつけたい人はつけたらいいと思いますし。

 

谷:社員ごとに働き方が自由になりすぎることはありませんか?

 

柳:ありますね。僕が率いているのが人事部のチームなんですが、好きな時間に出社して仕事をしていたりします(笑)。

 

谷:一般の会社では驚かれますね(笑)。

 

柳:その代わりに、「3ヶ月に1回は絶対に面白い企画を出す」という企画力を評価基準にしています。そうすると、実際に面白い採用キャンペーンが提案されてくるんですよね。だからこそ、この人事チームのあり方も認めています。とはいえ、マネジメントは各事業部のチームリーダーに任せているので、時間に厳しいチームももちろんあります。あり方はそれぞれチームのカラーでいいと思っていますね。

 

谷:リーダーに任されている範囲が広いのですね。会社の在り方はそれぞれだということを改めて感じました。今後もカヤックさんの組織作りに注目させていただこうと思います。

 

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※取材・執筆/坪井安奈 『Grand Style』2号  2014年9月発行

 

 

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