【社長対談 サイバー×ミクシィ】加速と我慢の時期

本誌『Grand Style』の社長対談シリーズ。今回は、株式会社サイバーエージェント代表取締役社長・藤田さんと、株式会社ミクシィ代表取締役社長・森田さんに、“会社として加速の時期、我慢の時期”、“リーダーのあり方”について語っていただきました。

※この記事は、2015年2月発行『Grand Style』コンテンツを編集したものです。

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(左)株式会社サイバーエージェント・代表取締役社長 藤田晋

1998年3月に株式会社サイバーエージェントを設立。2000年に当時最年少の26才で東証マザーズに上場し、2014年9月に東証一部上場。同年12月には『麻雀最強戦2014ファイナル』に初出場で初優勝し、麻雀最強位の称号を獲得。

(右)株式会社ミクシィ・代表取締役社長 森田仁基
mixiアプリの立ち上げ、『モンスターストライク』のエグゼクティブプロデューサーなどを経て、2014年6月に代表取締役社長に就任。2011年にはサイバーエージェントとの合弁会社であるグレンジに取締役副社長として出向。趣味はゴルフ。

 

■監督とプレーヤー、社長の持つ2つの顔

森田:今日はよろしくお願いします。

 

藤田:森田さんが社長に就任された時には、社内も大変湧きましたよ。御社と当社との合弁会社のグレンジに出向されていた関係で、森田さんのことを知る社員はたくさんいますからね。

 

森田:ありがとうございます。思えば、グレンジに出向したことが僕の転機で、組織についてすごく考えるようになりました。それまでは、マネジメントをするというよりも基本的に全部自分でやりたい性格だったんです。当初も「ミクシィから一人でサイバーに乗り込んで、いろいろやってやる!」という意気込みで出向したんですが、サイバーの組織力や人材育成などのマネジメント部分を間近で見て、すごく勉強になりました。それからミクシィへ戻り、組織作りを強く意識するようになったんです。

 

藤田:基本的には自分でやった方が楽しいですからね。成功した時に、達成感や充実感を得られるのは、現場にいるプロデューサーや技術者ですから。現場に出ていると、「俺、生きてる」といった血の通った実感を得られる。だけど、それを社長がやりすぎると組織の中で人は育たないし、事業がスケールしていかないですからね。

 

森田:そうですよね。なので、社長に就任してからは、『モンスターストライク』(以下、モンスト)のエグゼクティブプロデューサーを兼任しつつも組織作りに注力し、人材の適材適所や成果に対してどのように評価をするかなどを整えてきました。

 

藤田:社長という“監督”と、現場での“プレーヤー”という2つの立場のバランスは難しいですよね。私もアメーバの総合プロデューサーを兼任していますが、今ではほとんどを現場に任せるようにしています。社長である以上、会社を大きくしていくためには、現場で感じるその快感から抜け出せるかどうかは重要です。

 

■“いつも謙虚に堂々と”リーダーに必要な要素とは

藤田:『モンスト』も世界的ヒットを生むなか、会社の調子はいかかでしょう?

 

森田:たしかに、業績は順調で会社の雰囲気も良いですが、常に危機感はあります。

 

藤田:森田さんは、いつも本当に威張ってないですよね。『モンスト』をあれだけ当てていたら、もっと偉そうになってもおかしくないのに(笑)。

 

森田:いやいやいや、ミクシィの一度ドン底を知っているので。

 

藤田:謙虚にいかなきゃだめだなと。

 

森田:はい。すごく悔しい思いもしてきたので、もう絶対にああいうことは起こらないように、戒めの気持ちを持っておかないと。

 

藤田:悪い時を経験している会社は強いですよね。大きなヒットを出しても、意外と冷静に見ていたり。

 

森田:乗り越えると強くなりますね。

 

藤田:単純ですけど、業績が良いと組織の状態は良くなりますよね。皆が自信を深めるし、やる気も出る。良い時は何やっても当たるから、攻め手をどんどん打たないといけない。でも、悪い時はその真逆。悪い時には何をしても裏目に出てしまったりするんです。そこで投げやりになったり、開き直ってはダメですが、一発逆転しようとあまり無理しない方がいいですね。そういう時は真面目に粛々と仕事をするのが一番です。

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森田:その通りですね。特に『モンスト』が生まれた時はドン底な時期だったんですけど、ただひたすら耐えて耐えて耐え続けて…。

 

藤田:その時に森田さんが信じていたものはなんでしたか?

 

森田:ただ自分たちがやってきたことを信じていました。あの時、世の中の流れはリアルの繋がりじゃない方にいっていましたが、僕らはSNSの会社だからこそ、ソーシャルというのをもっと突き詰めて考えていました。リアルな繋がりを少し工夫してお金に変えられる方法はないかと。「とにかく、作りたいものを信じて、変えずにやってこう」と声がけしていましたね。

 

藤田:やはり、リーダーが大事ですよね。リーダーが確信を持っていたら、皆も安心する。リーダーがダメかもと思っていると、周りも不安になる。業績が悪い時にやらなきゃいけないのは、トップが皆の前に顔を出すことだと思います。少しでも厳しい局面を迎えたら、積極的にオフィスを回ったり、皆を集めて話す。逃げちゃダメですね。

 

森田:そうですよね。とにかく前を向いてやり続けるしかありませんでした。ただ、言葉でのフォローにも限界があって、やっぱり結果を出さないと意味がないというのも事実で…。辛い時もありましたね。

 

藤田:そういう意味では、リーダーは孤独ですよね。心の中はどんなに不安でも、見た目では堂々としていなければならない。

 

森田:藤田さんはいつもリーダーの風貌を保たれていますよね。

 

藤田:一緒について来てくれる仲間がいるから強くいられますね。アメーバの時も、最後までいけると一緒に信じてくれた仲間がいました。最初は数人でも、そういう想いはだんだんと組織に伝線していきます。

 

森田:辛かった時期にいなくなってしまった人もいますけど、一方で一緒に信じてやり続けてくれる社員たちがいました。業績が悪いと退職者が目立ちそちらに目を向けがちですが、今一緒に働いてくれている仲間の存在を絶対に忘れてはいけないと思っています。

 

■ブログ・SNSをフル活用する藤田社長の発信方法

藤田:森田さんは社長になってから何か変わったことはありましたか?

 

森田:あんまりないですかね…。オフィスの座席も今までと同じ場所ですし、毎日食べるものも特に変わらないですし(笑)。

 

藤田:最近は社員と同じフロアに社長もいて…という企業が多いですよね。私より10才ほど上の世代の経営者たちは、どこへ行くにも秘書を3人くらい連れて、すごい車で移動して…そういったトップとしての尊厳を保つことも時として社長には必要なのかもしれないですが、最近の若い経営者はそういうことをしない傾向が強いですよね。

 

森田:僕の場合は、まだまだ事業が安定していないと思う部分があるので、なるべく自分の現場感を養うために、今も社員と同じフロアにいて、席も一番端っこの方にいますね(笑)。

 

藤田:なるほど。私は、会社にいつ来ていついなくなったかあえてわからないようにしています。私がいるかいないかで社員の仕事に影響を与えたくないというのが理由です。社長がいる時には頑張って働くけれど、社長が帰ったら「俺も帰ろっかな」という具合にならないように。私はどうしても夜は会食が多いですから。

 

森田:でも、藤田さんは社内での会食もよく開かれていますよね。

 

藤田:うちはそもそも社内会食などの飲みニケーションを推奨しています。

 

森田: 外からの誘いも多いなか、その辺たりのバランスはどうされているんですか?

 

藤田:自然と6:4くらいになっていますね。6割が社外で、4割が社内。

 

森田:僕も積極的に社内の飲みの場などには行くようにはしているんですが、なかなか余裕がない時もあり。やはり、昔の方がよく時間を取っていました。普段は藤田さんから社員を誘うんですか?

 

藤田:基本的に何かのお祝いの時が多いです。ベストチーム表彰や昇格祝いや決起会など。だから必然的に、好調なプロジェクトチームや優秀な勢いのある社員に会うことができます。

 

森田:それ以外の社員に対してはどうやって接しているのですか?

 

藤田:社員に対してのメッセージをブログで発信することが多いです。

 

森田:僕も拝見しています。社外の人も興味が持てる内容になっていますよね。

 

藤田:内容自体は社内だけというような内輪感を出さないようにしています。社内へのメッセージを出しすぎると、押し付けがましくて結局読まれなくなってしまう。でも、一般の人向けに発信しているものなら皆読んでくれる。他の人が読みたいものは、社員も読みたいんですよ。

 

森田:なるほど。いつも毎回記事の内容が深いとと思い読んでいますが、1つの記事を書くのにどのくらいかかるんですか?

 

藤田:サラサラと書いているフリして、実は結構時間かかってるんですよ(笑)。1時間くらいかかる時もあります。それでやっとアップして、「あれ?こんな短い文章か」って思うことも多い。ブログに書くからにはそれなりの分量や写真の枚数も必要なので、いつも相当集中して、何度も推敲します。森田さんはブログはやらないんですか?

 

森田:恥ずかしながらやっていないんです…。まだまだ小さい会社なので、普段から皆の前で話す機会が結構あり、そこで考えを伝えたりすることが多いですね。メールで伝える場合もあります。

 

藤田:きっと、社員からはまだ森田さんが身近にいるという感覚なんですね。

 

森田:まだ自分自身の中で、行動で見せるフェーズかなと思っていて。でも、サイバーの社員の方からも、藤田さんを身近に感じられるとよく伺います。

 

藤田:私はブログやSNSでの発信によって身近なふりをしているんです(笑)。ネット上でよく見る人は、久しぶりに会っても久しぶりな感じがしないじゃないですか。

 

森田:藤田さんは社員のSNSによく反応されていますよね。

 

藤田:ただ、やりすぎると「社長に見られている!」みたいなプレッシャーになってしまうので、本当にいいなと思ったものだけにしています。

 

森田:でもその方が社員の方も嬉しいんじゃないですか。

 

藤田:昔は逆に社員と距離を置いていた時期もありましたよ。

 

森田:そうなんですか!?

 

藤田:会社の設立時は意識的に距離をとっていました。企業が立ち上がってすぐのフェーズでは、社長も社員もそこまで大きな差はない。年齢もそれほど変わらなければ、最初はまだ実績も少ないですし、そういった意味で実力差も大したことないんです。だから、意識的に社長然としようと思ってあまり一緒に飲んだりすることはなかったですね。

 

森田:なるほど。やっぱりリーダーって孤独ですね(笑)。

 

藤田:ただ、それなりに実績ができて年月が経てば、自然と“社長らしさ”みたいなものは身についてきます。そうなった後は、逆にフランクに社員と接するようになりました。

 

 

■社長・企業としての見られ方

森田:藤田さんは、ストレス発散方法など、セルフマネジメントについてはどうされていますか?

 

藤田:うーん…やはりお酒ですかね。でも、不健康になる時の原因もだいたいお酒なので、ほどほどにしないといけないですが。

 

森田:麻雀はストレス発散ではないんですか?

 

藤田:麻雀※は歯を食いしばって耐えるゲームなので、むしろストレスが溜まります。楽しんで打つようになるとだいたい負けますね。だから、仕事の息抜きにはならない。むしろ、麻雀は仕事に近いものがあります。

(※藤田さんは、2014年12月に麻雀最強位の称号を獲得している。)

 

森田:さすが、代表取締役社長 兼 麻雀最強位ですね(笑)。藤田さんの勝負勘は麻雀で培われた部分もあるんですね。

 

藤田:時には一生懸命作り上げたものを崩して降りざるをえない場面もありますからね。遊びで打っているうちはまだダメです。森田さんの息抜きは?

 

森田:今はゴルフですね。学生時代はゴルフショップでアルバイトしていたこともありました。仕事での付き合いだけでなく、業界内の仲の良い仲間ともよく行きます。藤田さんはゴルフはされるんですか?

 

藤田:今は麻雀が忙しくて(笑)。あまり麻雀の話ばかりしていると怒られそうですが、いつも外からの見られ方というのは考えて動いています。

 

森田:藤田さんのブログは、広報の方のチェックとかは…

 

藤田:しないです(笑)。だから常に第三者的な自分を持って、周りからどう見えるかというのを、ちゃんと計算しています。こう話すと嫌な奴っぽいですけど、でも社長として当たり前のことだと思います。

 

森田:外からの見られ方で一番気をつけていることってなんですか?

 

藤田:凧の糸は離してはいけないですよね。基本的にネット業界は昔から目立ってなんぼの世界。有象無象あるネットサービスの中から、自分たちを見つけ出してもらわないといけないですから。ただ、目立つことだけを考えていると、あれよあれよと脚光を浴びて凧のように登っていった時に自分がどこにいるのかわからなくなってしまうことがある。そのまま糸が切れた凧のように飛んでいってしまう人もいるので、糸だけは離さずに持っておかないといけないですね。

 

森田:地に足は着いていないといけないということですね。

 

藤田:もちろん、外からのネガディブな意見もありますが。

 

森田:外からの目線は大事ですが、執拗には気にしないことですよね。発言ではなくサービスで評価をしてもらいたいので、自分たちの価値観でしっかりしたものを作っていくことが基本だと思っています。
一方でミクシィでも、今は自然と周囲からの見え方を気にするようになりました。自分たちがやっていることが他の人や社会に影響を与えているんだと身近に感じるようになったのでしょう。会社ごとが自分ごとになって、当事者意識が芽生えたという意味ではとても良いことですよね。

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■加速の時期、我慢の時期の捉え方

森田:結局のところ、我慢の時期は、自分たちを信じてひたすら耐えてやり続けるしかないと思うんです。変に違うことをやってもあんまり上手くいかないことが多いと思うんです。

 

藤田:本当は、調子が悪い時が自分たちの本来の実力ですよね。良い時というのは“レアケース”だと思っていないといけない。麻雀にたとえると(笑)、 麻雀って4人でやるのでアガれる可能性は1/4で、本来の勝率は25%、強い人でも30%くらいです。残りの7割は耐えなければいけない我慢の時期。仕事の勝率もそれと同じ、むしろそれ以下かもしれません。調子のいい時は、それが自分たちの実力だと思わない方がいいですね。

 

森田:それに、僕は見方によっては我慢の時期の方がある種の有利性があるとも思うんですよ。我慢の時期は、ヒット作や新しい価値を生み出そうと必死じゃないですか。僕らも『モンスト』を作っている時はものすごい覇気をまとっていました。今ヒットを飛ばしている企業は、死に物狂いでやっている企業と同じ雰囲気で頑張らないと、次の勝負で負けてしまいます。だから僕たちもチャレンジ精神を忘れないようにと、日頃から社員に伝えています。

 

藤田:悪い時期を乗り越えているからこそ、そういった考え方ができるのでしょうね。早い時期にピークを経験してしまうとその過去の栄光にとらわれてしまうので、その後の難しい局面を打破するのに苦労をする。御社は一度悪い時を乗り越えているから浮き足が立たない。そういう会社は簡単には壊れないですよ。

 

森田:企業がどんなフェーズであっても、必死に、死に物狂いで目の前の仕事をやることですね。

 

 

※取材・執筆/坪井安奈 『Grand Style』3号  2015年2月発行

 

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