キュレーションって結局何なの?人気キュレーションメディア『by.S』『SHERYL』編集長に迫る

 

webメディアにおいて、もはや定番になった“キュレーション”というワード。

さまざまなカテゴリーのキュレーションメディアが登場し、なかでも、女性向けキュレーションメディアの勢いには目を見張るものがある。 なぜ、こんなにも今キュレーションが求められているのか。

人気メディアの『by.S』編集長と『SHERYL』編集長に伺いました。

※この記事は、2015年10月発刊の『Grand Style』の記事を一部修正し、掲載しています。

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(右)株式会社サイバーエージェント『by.S』編集長 若村 菜摘

忙しい現代女性ために、厳選したニュース・トレンド・美容・ファッション・恋愛情報などを届けるメディア『by.S』。大人女子のためのリアルなトレンド情報が満載。

 

(左)株式会社Nagisa『SHERYL』編集長 林 千賀子

おしゃれを愛する女性のためのファッションメディア『SHERYL』。注目の新作アイテムを使った編集部おすすめの着こなし方法や、 オリジナルのヘア・メイク動画から真似できるスタイルが見つかる。

 ▼まずは簡単に、それぞれのメディアの紹介をお願いします。

若村:『by.S』は、27才から30代前半の女性へ向けたサービスです。『by.S』のターゲット層である社会人3、4年目以上の女性は、「周りの女性と一歩差をつけたい」「いい女になりたい」と思う方が増えてきます。そんな女性に対して、厳選・洗練された情報を発信しています。

 

林:『SHERYL』は、「ファッションで世の中をハッピーにしたい」をコンセプトにしたファッション特化型メディアです。ファッションは、毎日の生活に密接に関わる女性のライフスタイルの一部。25~35才の働く女性をメインターゲットに、トレンドや新しい着こなし方などのファッション情報はもちろん、ヘアスタイルや美容、話題のスポットなど、ファッションとの親和性の高い情報をお届けしています。

 

▼なぜ、今キュレーションが必要とされているのでしょうか?

若村:近年は、働く女性が増え、ゆっくり雑誌を読んだりテレビを観たりして情報を得るということが難しくなってきています。

 

林:なかなか情報取集に時間を割けないですよね。皆1日24時間の中で、メディアに触れる機会は、とても限られています。

 

若村:なので、電車内やメイクを直すトイレの中など、限られた時間の中で洗練された最新の情報が手に入るというのが、キュレーションメディアが求められている理由だと思います。

 

林:いくら忙しくても、女性は少なからずトレンド情報をキャッチしたいですからね。いかに効率的に情報を集められるかがすごく重要。一番ホットな情報が集まる場所に、効率よく情報を取りにいくのだと思います。

 

 ▼“キュレーション”や“キュレーター”ってどういう仕事だと思われますか?

若村:“再編集”や“まとめ”などのイメージを持たれている方が多いですよね。もちろんそのスキルも伴います。しかし、『by.S』では「生っぽい」情報を受け渡していくことがキュレーションの役割だと思っています。

 

林:「生っぽい」とは?

 

若村:一般の女性の感覚に近い、リアルな情報を「生っぽい」と呼んでいます。たとえば、プロのヘアメイクによるメイク術はたしかに知識も技術力も高い。でも、実は一般の女性が本当に求めている情報は、「ここのニキビ早く治ってほしい」や「化粧崩れを防ぐにはどうしたらいいか」など、日常で起こる悩みの解決方法だったりするんです。

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林:ある意味実用的で、本当に必要な情報ということですね。

 

若村:はい。「実は数ある美容クリームの中でも、ニベアはよく効くんだよ」という情報は、美容のプロフェッショナルの方からはなかなか出てこない。だからこそ、私たちの美意識に近い感覚を持つ一般のライターの方に記事を書いてもらっています。「一般の感覚を持った方が、同じ悩みをもつ方に情報を受け渡していく」そういった行為を“キュレーション”と呼んでいきたいです。

 

林:私も、「”キュレーション”=まとめる作業」という考えは、本質ではないと思います。『SHERYL』では、必ず記事を提案型にすることを重視し、読むだけでなく、読んだ後に行動につなげてもらうことを強く意識しています。ですので、”キュレーション”は、次のアクションにつながるよう新しい出会いや発見を届けていくことだと思っています。

 

若村:とても共感します。私たちも、明日の自分に活かせる記事づくりを大切にしています。『by.S』では、タレントの方々のインタビュー記事も多いのですが、その際には必ず、タレントたちの経験や価値観を、私たちに一般人に応用できるかどうかを重視しています。この軸は、どんな取材においても絶対に譲れない部分ですね。

 

林:『SHERYL』も、オリジナリティーをかなり重視していて、引用は一切禁止しています。ライターの方には、必ず自分でオリジナル記事を書いてもらっています。今後はもっと取材や撮影を積極的に行って、『SHERYL』でしか読めない記事を届けていきたいですね。

 

若村:“自分事”だからこそ、キュレーションメディアの編集は毎日楽しいですよね。よく社員に、「最新のおいしいレストラン教えてください」とか、「買い物に行くんだけど、最近の流行は何?」とか、最新情報を聞かれることはありませんか?。

 

林:聞かれます。とても嬉しいですよね。

 

若村:すごく嬉しいです。張り切ってリストアップしちゃいますね(笑)。

 

 

▼2014年はキュレーション元年とも言われていましたが、今後はどんなフェーズだと思われますか?

若村:とにかく速いスピードで、大量の情報を発信していくサービスと、オリジナリティーや信憑性、正確性を重視していくサービスという、2軸に分かれていくのかなと。最近では、キュレーションメディアでも情報の正当性が問われています。『by.S』としては、後者を目指すべく、ブランドを意識したサービスに仕上げていきたいですね。

 

林:メディアのブランディングによって分かれていきそうですよね。『SHERYL』は、「ユーザーの方の次の行動を変えていきたい」という意味でも、いち記事に対する価値をどんどん上げていきたいです。記事の質をを上げ、ユーザーの方の満足度を上げることを最優先していきたいです。

また、サービス内の記事の作り方も、「即時性重視」と「作り込む」という大きく2つの種類がありますよね。

 

若村:記事の量も確保するには、両者のバランスが重要ですよね。記事のネタは、どのように決めていますか?

 

林:ライターの方が書きたいネタと読者が読みたい情報を擦り合わせています。編集部から書いてほしいテーマをお願いすることもあります。『by.S』さんではどうですか?

 

若村:『by.S』では、意外と社内から記事のネタが生まれることが多いです。これは当社の面白い特徴だと思うのですが、情報感度の高い社員を集めてSNSグループを作り、社内ネットワークのように活用しています。

 

林:なるほど。御社は社員数も多いですし、社内にまさにターゲット層がいるということですもんね。そのグループに招待されたら、ちょっと自慢にも思えそうですね!

 

若村:はい、男性からは箔がつくとも言われています(笑)。そのグループの中で、皆が自ら情報を発信してくれて、「あのブランドが日本に上陸するらしい」とか「実はこの化粧品がとても使える」などの情報を教えてくれるんですね。これこそが、私たちが求めている「生っぽさ」。編集部メンバー自身が感度を高める場所としても、とても貴重な場です。

 

林:情報感度を高めることは重要ですよね。そういう意味で、『SHERYL』はライターの方の育成体制に力を入れています。『SHERYL』はファッションメディアですが、ファッションだけの情報のみでなく、「ファッション×〇〇」で、面白いネタができることも多々あります。ですので、ライターの方には、ファッションと関係のない情報も収集し、世の中でどういうことが起こっているのかも普段からちゃんと知り、いろいろなヒントを得てほしいと伝えています。

ライターの方は常駐で会社に来てくださる方を中心に採用していて、毎日社内で記事を書いてもらっています。

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若村:へぇ! オフィスに来てもらっているのですね。

 

林:はい。私たちのスピード感や温度感を感じてもらいながら記事を書いてもらいたくて。常駐のライターは現在20名(2015年10月時点)ぐらいですが、これからさらに採用していくつもりです。『by.S』さんはライターの方は何名くらいいらっしゃるのですか?

 

若村:1,000人以上はいるので、オフィスに来ていただくことは難しいのですが、すべての記事に対するフィードバックを徹底しています。すべての記事に目を通し、イメージやカラーを細かく修正してもらっています。特に、画像の選定はかなり厳しくにチェックしていますね。

 

林:私たちも全ての記事を確認する体制をとっていますが、1,000名だと量が違いますよね・・・。

今後『SHERYL』でもライターの方がどんどん増えていきますが、常に読者の視点で、「これで本当にユーザーの方が行動を起こせるのか」ということを軸に置いていきたいです。

 

 ▼編集長として、心がけていることはありますか?

若村:編集長として周囲の方に納得してもらえる行動を、生活のすべてにおいて心掛けていますね。編集長は、一本筋が通っているべき人だと思っています。記事・ネタ選びは、正しい基準があるわけではなく、編集部のセンスの善し悪しで採用・不採用が決まる。その最終決定権が自分にあるので、説得力のある言葉で、どういう軸で選んでいるかを伝えられることが大事だと思います。

 

林:私もライターの方の記事にフィードバックをする立場として、『SHERYL』の軸をぶらさずに、納得してもらえるフィードバックを意識しています。そこがぶれたり、しっくりこないと、編集長についていきたい、ともに『SHERYL』を成長させたいとは思わないですもんね。

 

若村:まさにそうですよね。そして、自分の立ち居振る舞いはもちろん、洋服・化粧でも、「あの人は編集長として、誰よりもセンスがあるし、間違わない判断をするよね」「編集長が言うのだから、間違いない」という存在にならないといけないと思っています。私が毎日ノーメイクで出社していると、「そんな人に決められちゃうんだ」「センスがあるなんて思えない」というふうに見られてしまいます。感覚的な話ではありますが、女性社会においてはそういった日々の積み重ねはとても大事だなと感じています。

 

林:なにしろ、全員が女性ですからね。『SHERYL』では、編集部はもちろんライターの方とにコミュニケーションもすごく大切にしています。私にとってはライターの方も、ユーザーの方と同じくらい大事な存在。オフィスでの居心地の良さや仕事のしやすさを最大限追求していきたいです。そうすることで結果的に質の高い記事が引き出されると思うので。

 

 

▼今後、どのようなサービスに成熟させていきたいですか?

若村:社会人3,4年目になった時に、「そろそろ『by.S』読まないと」という、女性たちの通過儀礼のようなサービスにできたらと思っています。「『by.S』を見れば、今週食べに行くお店が決まるし、買う洋服もセンスが絶対外れない」と、ユーザーの方に安心感や信頼感を抱いてもらえるサービスにしていきたいです。

 

林:『SHERYL』も、ファッションについて知りたいと思った時、必ず『SHERYL』を見てもらえるようになりたいです。女性は、自分の好きなファッションジャンルはあるものの、それ以外のジャンルの情報も多少なり欲しいものですよね。たとえば、私はあんまりフェミニンじゃないと思うのですが、やっぱりそれらの情報もゲットしたい。だからこそ、『SHERYL』ではカジュアルもフェミニンもナチュラルも、ファッションを網羅的に扱っています。ファッションの始まりが『SHERYL』になるーそんな世界観を目指したいと思っています。

 

———-インタビュー終わり———-

 

さまざまなジャンルで展開されるキュレーションメディア。現在も多くのキュレーションメディアが生まれ、その競争は激しさを増している。

キュレーションメディアをどう大きくしていくか、また、いちユーザーとして数あるキュレーションメディアから自分に合ったものをどう選択していくか…その両者のエッセンスが、お二人の話に詰まっているだろう。

 

※取材・執筆/坪井安奈 『Grand Style』5号  2015年10月発行

 

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