interview

2016年8月24日

経営者の朝時間②

グッドパッチCEO・土屋さんの場合

朝を征するものは1日を征すー

アップルCEO・ティムクックは朝4時半に起床して部下に指示送り、スターバックスCEO・ハワード・ショルツは朝4時半に起床して妻にコーヒーをいれるのだとか。世界の名だたる経営者は、朝を征する者だらけ。
では、IT企業の経営者の方々は朝をどのように過ごしているのでしょうか?
経営者の朝時間・第2回目は、株式会社グッドパッチCEO・土屋尚史さんにお話を伺いました。

※この記事は、2016年4月発行『Grand Style』の記事を一部編集したものです。

 株式会社グッドパッチ代表取締役 兼 CEO

土屋 尚史

 1983年生まれ。Webディレクターとして働いた後、サンフランシスコのbtrax Inc.にてスタートアップの海外進出支援などを経験。'11年に(株)グッドパッチを設立。UIデザインを強みにしたプロダクト開発で数々の企業を支援。'15年にはベルリンに進出。

 

朝は、保育園への送りがひと仕事

 

―普段、平日の朝は何時に起きて、どのように過ごされますか?

毎日7時半~8時の間に起きますね。だいたい、5才の娘に「パパ、起きて!」って体を揺らされるか、1才の息子の泣き声に起こされます(笑)。
朝は、子どもたちを保育園へ送り届けるのが僕の役目なんです。妻はプログラマーをしているのですが、妻の会社の方が出社が早いので、僕が朝の送り、妻が夜の迎えと分担しています。
ただ、お子さんがいる家庭はどこも同じだと思うのですが、朝は毎日戦争なんですよ…。
8時半には家を出て、電車で保育園に向かうのですが、娘が通園途中でトイレに行きたくならないように、家を出るまでに絶対にトイレに行かせないといけなくて。家を出るまでずっと「トイレ行ってきなさい、トイレ行ってきなさい」と言い続けています。ようやく行ってくれたと思ったら、今度は家を出る直前に「やっぱり、これじゃない」とか言って、履いていたズボンを脱いで別のズボンを探し出したり…。女の子ですよね(苦笑)。そういった事件が何も起こらなければ、僕は朝ごはんを食べる時間ができるのですが、食べられないことも多いです。
1才の息子も、ベビーカーに乗せると泣き止まないことがあるので、そういう場合はだっこ紐でだっこして、娘の手を引いて…。たまに、取引先の方と駅ですれ違ったりすることがあるのですが、朝は完全にパパの顔をしていると思いますね(笑)。
子どもを無事に保育園に送り届けた後、会社に向かいます。始業の10時に向けて、9時半くらいに出社します。朝からひと仕事終えた達成感がありますよね。

 

時間がないことが前提の“起業”

 

―土屋さんは、起業されるタイミングですでに奥さんとお子さんがいらっしゃったんですよね。

そうです。サラリーマン時代、23才で結婚して、27才の時に娘が産まれて。生後8ヶ月の娘を連れて、サンフランシスコへ行き、帰国後に起業しました。妻は起業に大賛成というわけではありませんでしたが、お付き合いを始めた当時から「30才までには起業する」と言っていた僕を理解して、ついてきてくれました。自分の中で、20代のうちに起業しないといけないというのが漠然とあったんです。世の中で成功している起業家って、だいたい20代で起業しているケースが多い印象が強かったので。
ただ、家族がいるなかでの起業です。他の独身の経営者のように四六時中仕事に打ち込むことはできませんし、そう考えたら使える時間は圧倒的に少ない。しかし、家族がいることを絶対に言い訳にしたくはありませんでした。家庭を持っている以上、家族との時間を確保するのも僕の仕事です。だから、僕は時間がないということを前提に、限られた時間の中で最大限のパフォーマンスを出そうと決めていました。それは、起業した今も変わっていません。そういう意味で、集中力は他の人よりも鍛えられているかもしれませんね。

 

深夜24時からが“熟考タイム”

 

―朝は子どものための時間ということでしたが、ということは夜が自分のための時間ですか?

いえ、夜もやはり子ども中心ですよ。僕は20時過ぎには会社を出て、早く家へ帰るようにしているのですが、家に帰ったら家族と一緒に食事をして、子どもたちと一緒にお風呂に入って、絵本を読んで寝かしつけて…。もちろん、妻が仕事で疲れていたり、体調が悪い時には、僕が料理をすることもあります。飲み会に参加することはありますが、二次会はほとんど行かないですね。

―ということは、仕事は会社にいる時間にすべて終わらせるんですか?

いえ。基本的に日中はずっとミーティングが入っていて、思考を深めたり、書き物をする時間はほとんどないので、ゆっくり考える時間ができるのは深夜です。家族が寝た24時くらいから、やっと自分の時間が始まります。プレゼン資料を作成したり、会社の目指すべき方向性について考えたり、組織のことを考えたり、雑誌連載の原稿を書いたり。ああでもない、こうでもないと熟考できる大切な時間です。寝るのはだいたい明け方の3時、4時ですね。

―休みの日の過ごし方はいかがですか? 仕事をすることはありますか?

休日は8時~9時くらいに起きますが、土日もずっと家族と過ごします。仕事のことは常に頭の片隅にはありますが、家族がいるのにパソコンを開いて作業…なんてことは僕にはできませんね(笑)。休日は、家族とショッピングセンターに出かけることが多いです。いわゆる経営者の方々の趣味に多いゴルフには一度も参加したことがありません。

 

子どもがいると生活リズムが整う

 

―それだけ自分のための時間が少なくて、ストレスは溜まりませんか?

結局、家族と一緒にいる時間が大切なんですよね。子どもたちもかわいくて、朝、娘と手を繋いで保育園へ向かっていると、ピョンピョンしながら「パパ、大好き!」とか言ってくるんですよ。それだけで、生きていて良かったなぁと思えるんです。(「パパ大好き」動画を嬉しそうに見せる土屋さん)
たしかに今、自分のための時間は少ないですが、不思議とメリハリができて、生活リズムは保たれているんですよね。もともと朝には弱くて、だらだら寝ていましたし、夜も不規則な生活をしていました。でも、子どもがいることによって、朝は絶対起きないといけなくなりましたし、生活スタイルは圧倒的に変わりましたね。
起業家仲間や会社の皆も、僕のライフスタイルを理解してくれているので、「飲み会じゃなくて、ランチにしよう」と誘ってくれたりします。飲み会でのコミュニケーションももちろん大事なことだと思っていますが、お酒の力を借りなくてもお互いの胸の内を話せるようなコミュニケーションを日頃から心がけています。

 

インプットし続けないと終わる

 

―社員の方に、時間の使い方について聞かれることはありますか?

そうですね。当社は過去に終礼の習慣があったこともあり、仕事を切り上げやすい雰囲気がありますし、僕が先陣を切って会社から早く帰る文化を作っているのですが、早く帰るというのは決して「楽をしよう」ということではありません。帰ってからの時間を、いろいろなインプットの時間に充ててほしいという思いがあります。この業界では、新しい技術やサービス、情報が毎日のように出てきます。特に、当社に多いデザイナーやプログラマーといった職種は、今使っているツールや言語が数ヶ月後には古くなっていたりする。変化を追い続けていないと新しいことへの挑戦ができなくなる職種だと考えています。日々のインプットが自主的にできないと終わりなんです。新しい挑戦を続け、アウトプットし続けていくためにも、ずっとインプットをしていることがマストな業界だと思っています。

―土屋さんは、インプットも深夜にされるんですか?

深夜だけでは足りないので、隙間時間は全部インプットの時間ですね。1才の息子を抱っこして寝かしつけながら、片手でスマホ見たり、Kindleを読んだりしています。

 

グッドパッチの魂のような存在に

 

―家ではイクメンな土屋さんですが、会社では代表として、どういう立ち回りをされていますか?

僕は今まで、自らが一番にリスクをとって、先陣を切って、戦国武将のように「俺についてこい!」と背中で見せていくタイプだったんですが、昨年社員が50人を超えた時にもう限界だなと感じました。目指すべき方向を示しながら、組織全体がモチベーション高く、1日も早くそこへ向かうための仕組みを作ることが僕の役割だと思っています。
グッドパッチは「デザインの力を証明する」というミッションを掲げていますが、僕たちは設計や経営などの上流部分から関わることがデザインだと考えています。ですが、日本でのデザインはまだまだ表面的なものだけだと誤解されている。なので、エンジニアと比べるとなかなか市場価値が上がらない。日本はもちろん、世界でデザインの力を信じる人たちを増やすというのが僕らのミッションであり、思いです。そのミッションに対して、社員の皆が情熱を持って向かっていけるように、 グッドパッチの魂のような存在でありたいなと思っています。

取材・文グラスタ編集部

グラスタ編集部