interview

2016年10月7日

NEXT GENERATION CREATORS

元サイバーのweb漫画家・矢島光さん

インターネットをステージに、さまざまな方面で活躍する次世代クリエイターに焦点を当てる本企画。今号は、IT業界を舞台としたweb漫画『彼女のいる彼氏』を連載中(10月8日より単行本の発売決定)のweb漫画家・矢島光さんにお話を伺いました。

※この記事は、2016年4月発行『Grand Style』6号 を編集したものです。

漫画家

矢島 光

2011年、慶應義塾大学在学中に『モーニング』の「MANGA OPEN」に入賞し、漫画家デビュー。卒業後は株式会社サイバーエージェントへ入社し、フロントエンジニアと漫画家との両立を図る。その後、漫画に専念することを決意し、'15年に退職。web漫画家に。現在、『彼女のいる彼氏』を連載中。

フロントエンジニアからweb漫画家へ

 

―矢島さんは今は漫画家ですが、もともとはIT企業でフロントエンジニアをされていたんですよね?

そうなんです。新卒でサイバーエージェントに入社し、昨年までフロントエンジニアとしてwebサービスの運営に携わっていました。漫画自体は小さい頃から描いていて、大学在学中に『モーニング』で漫画家としてデビューもしたのですが、卒業後は就職する道を選びました。

 ―そのまま漫画家になるという選択肢はなかったのですか?

もちろん、ギリギリまですごく悩みました。ですが、当時の編集担当の方に、「就職しても漫画は続けられる。会社というものを見ることは、その後の漫画に必ず活きる」と言っていただいて。就職をして、漫画も描き続けるという決断をしました。入社後は、フロントエンジニアとして働きながら、睡眠時間を削ってネームを描く日々。すごく充実していたのですが、オーバーワークな生活で体調を崩してしまうこともあって、ある時、ふと「120%で生きられていないな」と思ってしまったんです。それで、やはり漫画一本でいこうと決め、退職しました。あの時は、まだ連載も何も決まっていなかったのですが、自分を鼓舞するために勢い半分でもありましたね(笑)。

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キラキラ女子の誤解を解きたかった

 

―漫画家として新たなスタートを切って1年。連載中の『彼女のいる彼氏』の舞台にIT業界を選ばれたことにはどういう思いがあったのですか?

リアリティを追求したかったからです。読者の方からも、「内容がリアルで共感できる」「IT業界あるあるが面白い!」などと言っていただけるのですが、そういう描き方ができるのは自分が働いていた経験があるからこそ。
また、IT業界は時として“キラキラ女子”と揶揄されることがあると思うのですが、そのマイナスイメージを払拭したかったというのもありました。キラキラ女子って、世間ではキャピキャピしているイメージが先行しがちですが、本当は、普段は明るく周囲を盛り上げつつも、影で何倍も努力をするような芯のある部分を持っています。そんなキラキラ女子本来の魅力や実態を伝えたいという思いがありました。本作の9話にも出てくるんですが、実際、毎日きっちりメイクして、オシャレして、皆の前では笑顔を絶やさず盛り上げて…って大変ですし、誰もが簡単に真似できることではないんですよね。…と言いつつも、実は当初はwebでギャグ漫画を描くつもりだったのですが、編集の方に「やっぱり、皆、キラキラ女子は見たいんだよ!」と言われ、背中を押してもらったのも大きいですね(笑)。

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UI・UXまで考えられる漫画家に

 

―漫画のアウトプット先として、なぜ紙でなくwebを選んだのですか?

IT業界で働いていたので、もともとwebが好きだったというのもありますが、もっとweb漫画の価値を上げていきたいという思いがあったんです。web漫画ってまだまだ価値が低くて。同じ漫画家でも、「webで連載持ってます」と言うのと「雑誌で連載持ってます」と言うのとでは皆の反応がまるで違います。そういうライトな面がwebのいい部分でもあるのですが、これからweb漫画家を目指す若い方たちのためにも、市場価値を上げていくことは大事だなと思いますね。

―web漫画の強み・魅力ってなんだと思われますか?

まず、カラーなのがいいですよね。webだと印刷コストをかけず、全てのコマをカラーで描くことができ、キャラクターの洋服やファッションなど細かい部分まで表現できます。それに、今はもうカラーが当たり前すぎる時代なので、読者からすると漫画もカラーでないと物足りないくらいの感覚になっているのではないかと思っています。
また、フロントエンジニアの経験を活かして、UI・UXの観点から漫画を描けるのも面白いです。実は、『ROLA』のアプリ内で『彼女のいる彼氏』を縦読みのUIにしたいと提案したのは私なんです。あと、webで読む時も紙の漫画となるべく近い体験になるように、上下左右の余白を極力とらないよう工夫したりもしています。そういった“読み方”や“ユーザー体験”はこれからも追求していきたい部分ですね。
さらに、web漫画だからこそ、作中のキャラクターがwebの世界に本当に生息しているかのように見せることもできるかなと思っています。まだ試行錯誤中ですが、キャラクターのInstagramアカウントを実際に作ってみたんです。今後フォロワーが増えてきたら、web広告とのタイアップなどいろいろな可能性も見えてくるのかなと考えています。

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漫画家も自らの発信を考える時代

 

―フロントエンジニアの経験がweb漫画に活き、会社員の経験がビジネス視点に活きているんですね。最後に、今後の目標を教えてください。

今後も、webだからこそできる新しいことを模索し、挑戦していきたいですね。インターネットで個人の発信が容易になっている今だからこそ、web漫画家は自らの発信方法を考えていくことができますし、いろいろな可能性があると思っています。今後、web漫画発で『彼女のいる彼氏』がドラマ化されたりすることがあればすごく嬉しいですし、そういったことが少しでもweb漫画の価値を上げることに繋がっていけば嬉しいです。

 

【単行本情報】

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『彼女のいる彼氏』1巻/矢島光(新潮社)

フルカラー144ページ/本体価格720円(税込778円)

 

《STORY》

IT大手企業(株)サイダーエイジ・ジャパンで、キラキラ女子とオラオラ男子に囲まれて働くUIデザイナーの咲は、27歳、彼氏なし。仕事にフルコミットしても、上司の評価はイマイチ…。そんなしょっぱい毎日にちょっぴり変化の兆しが。会社のフロア変更でチャラ男揃いのPL+T局が隣にやってきた!

取材・文グラスタ編集部

グラスタ編集部