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2016年12月10日

NEXT GENERATION CREATORS

宇宙飛行士を目指すタレント

次世代のエースを発掘するNEXT GENERATION CREATORS。今回は、宇宙飛行士を目指すタレント、黒田有彩さんをご紹介します。

タレント

黒田 有彩

宇宙飛行士を目指すタレント。1987年生。お茶の水女子大学 理学部 物理学科卒。NHK Eテレ『高校講座 物理基礎』MC、読売テレビ『ハッカテン』ゲスト、『宇宙女子』(2015年、集英社インターナショナル)共著など、宇宙・教育・研究分野のメディアを中心に活動中。 ※この記事は、2017年1月発行『Grand Style』の記事を一部編集したものです。

理系少女として育った過去

 

宇宙に興味を持つきっかけになったのは、幼稚園の時に観た「セーラームーン」でした。「マーキュリー」や「マーズ」などのキャラクター名から太陽系に興味を持ち、図鑑を見てその大きさや美しさに圧倒されました。
宇宙飛行士になりたいと思い始めたのは、中学2年生の時。科学に関する作文コンクールで最優秀賞をいただき、その副賞でNASAを訪れた経験から「宇宙へ行きたい」という思いが強くなりました。大学では宇宙のことを学ぶために不可欠である物理学を専攻する一方、タレント活動も始めました。そのお仕事も本当に楽しく、さまざまな経験をさせていただきましたが、やはり宇宙への興味がなくなることはありませんでした。2008年、JAXAの宇宙飛行士の募集があったのですが、応募資格に“3年以上の専門分野における実務経験”とあり、まだ(当時学生のため)資格を満たしていなかったにも関わらず、気持ちだけでも伝えたいと思い応募したこともありました。また、タレントとしてもNHKの物理番組のMCなど、宇宙好きというバックボーンを生かした仕事が増え、いつも宇宙とはどこかで繋がっていました。

 

宇宙飛行士は“準備期間”も仕事?

 

JAXA宇宙飛行士の募集は、10年に1度程度しか行われていません。これまでの頻度を踏まえると次は2018年頃だとも予想できますが、本当に実施されるかどうかはわかりません。応募には3年以上の専門分野における“実務経験”が必要で、国家公務員に似た試験が実施されます。ただ、宇宙飛行士に“適した人”というのは実は明確には決まっていないんです。学力テスト、英語の語学テスト、一般教養、健康面や体力面の検査、コミュニケーション能力などあらゆる分野でバランスの良い適正を求められます。何か1つが優れていても、他が欠落していればアウトという、セレクトアウトと呼ばれる方法で“適さない人”を除外していくそうです。
試験を通過して候補者になれたとしても、必ず宇宙へ行けるとは限りません。まずは具体的な宇宙におけるミッションにアサインされる必要があり、アサイン後は訓練を重ね、ミッション実施の時期が言い渡されるのを待たなければなりません。実際、宇宙飛行士の山崎直子さんも28才で候補者に選ばれてから、宇宙へ行くまでには11年かかっています。いつ行けるのかわからないなか、可能性を信じて訓練を続けていく。ある意味、待つことの方が長い職業とも言えるかもしません。さらに、山崎さんの場合、訓練中に妊娠が発覚し、出産前後に訓練ができなくなることから“身体的不適合”と通達されたというお話も聞きました。とてもショッキングな言葉ですよね。でも、それを乗り越え、宇宙飛行士として活躍された山崎さんを本当に尊敬しています。

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タレントとして宇宙飛行士を目指す決断

 

今お話したように、宇宙飛行士への道のりはとても長く、しかも過去に候補者に選ばれた人は、医者や科学者やパイロットなどといった職種の方ばかり…。タレントとして宇宙飛行士を目指すなんて無理だろうと諦めかけていました。そんな時、取材でお会いした山崎さんから励ましの言葉をいただいたんです。
「これからの時代は、黒田さんのように“伝える”仕事をしている人が宇宙飛行士になることで、たくさんの方へ宇宙の魅力を知ってもらうきっかけになると思います。宇宙飛行士とは単独ではなくてチームで活動するもの。チームに欠けている能力を、その都度探しているんです」
その言葉に背中を押され、「私も宇宙飛行士を目指していいんだ」と思えるようになりました。そして、「タレントとして宇宙の魅力を幅広く“伝える”」ことを“実務経験”に掲げ、宇宙飛行士を本格的に目指す決意をしました。

 

宇宙飛行士として何を“伝える”か?

 

晴れて宇宙飛行士の候補者に選ばれ、宇宙行きが実現したら、宇宙の素敵な部分をたくさん伝えていきたいのはもちろん、一方で、宇宙生活の中で不便なことや大変なことをリアルに伝えることも大事だと思っています。いくら写真や映像で宇宙を体感できたように感じても、実際に行ってみて初めて見えるものって、たくさんあると思います。宇宙を肌で感じた時に、私は一体何を思うのか…。想像を超えた世界を、自分の目で見て、自分の言葉で伝えていきたいです。
宇宙に行けたら、特に見てみたいものがあります。それは、月から、地球と太陽が一直線上に並んだ“地球版日食”を見ることです。月から地球の方向を見ると、太陽が地球で隠れて、地球の周りに太陽の赤いリングが見えるそうなんです。この景色はまだ一度も撮影されたことがないため想像することしかできないのですが、その幻想的な景色を自分の目で見て見たいですね。

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宇宙のバトンを繋ぐ存在に

 

宇宙は、やはりどこか遠い存在に思われがちです。宇宙飛行士を目指すタレントとしての活動でも、宇宙行きが実現して地球に帰ってきた後も、さまざまな形で宇宙の魅力を発信していきたいです。
これまでは、宇宙に関連する話題を扱う番組や雑誌などのメディア出演を通して、宇宙のことをお話してきました。それと並行して、より多くの方に宇宙に興味を持っていただくために、今後は自分自身でも企画を立ち上げ、新たな切り口で宇宙を紹介する取り組みも考えています。たとえば、直近では、「宇宙を題材にした楽曲」をリリースするというクラウドファンディングを実施しています。音楽という身近なものと組み合わせて、新たな方に宇宙のことを考えてもらいたいというチャレンジです。

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クラウドファンディングページはこちら

 

また、宇宙開発において生まれた技術を日常生活に活かす企画を行ったり、若い方向けの講演や私が宇宙に行くきっかけになった作文コンクールを自ら実施したり—さまざまなアイデアを今描いています。このような活動を積極的に行っていくために会社も設立しました。宇宙に関する企画アイデアがある企業の方がいらしたら、ぜひご一報頂きたいですね。
何十年が経った後、“黒田おばあちゃんが頑張ったから、今、皆が宇宙に行けるようになったんだよ”と言われる未来をつくっていけたら嬉しいです。

取材・文グラスタ編集部

グラスタ編集部