NEXT GENERATION CREATORS:チップチューンアーティスト・TORIENA

次世代のエースを発掘するNEXT GENERATION CREATORS。今回はチップチューンアーティストのTORIENAさんにお話を伺います。

toriena

トリエナ
1993年生まれ。ゲームボーイを使って作曲を行うチップチューンアーティスト。作詞、作曲、アートワークなどすべてをセルフプロデュースしている。立命館大学卒業後、webデザイナーとして企業に就職するが、音楽活動に専念するため2015年夏に退職。現在は作詞作曲、国内外でのライブやゲームBGMの作曲など幅広く活躍中。

★ 公式HP
http://www.toriena.net/

★Twitter
http://twitter.com/toriena

★SOUND CLOUD
http://soundcloud.com/toriena

 

 ■人間がいなければ存在しえない音

そもそも、チップチューンってどういう音楽なのでしょうか?

いわゆる「電子音楽」なのですが、ファミコンやゲームボーイなど、家庭用ゲーム機に内蔵されている音源で作られるのがチップチューンです。LSDj(Little Sound Dj)という、ゲームボーイで作曲ができるソフトを使って曲を作ります。波形の数値を調整し、音階を並べてメロディにして、セーブデータに保存していくんです。ライブでは、保存しておいた曲をゲームボーイから流していて、ライブスタイルはDJと近いかもしれません。

 作曲活動はいつから?

高3の時に、ライブハウスで電子音楽を聞いたのが転機でした。全身に稲妻が走るような衝撃を受け、「これをやらなきゃ!」と直感的に思ったんです。トキメキを超越する何かを感じて、この衝撃を他の人にも伝えたいと思いました。ですが、当時の私はピアノも弾けなければ、音楽的な知識も全くありません。そこで、アルバイトで貯めたお金でDTMやCubaseなどの作曲ソフトを買い、作りながら学んでいきました。

チップチューンに出会ったのは大学時代です。音楽サークルの先輩に声を掛けられ、チップチューンの聖地と言われている京都の『cafe la siesta』というカフェに連れていかれたのがきっかけでした。その後、作曲ソフトをもらってゲームボーイで曲を作り始めました。いろいろな作曲ツールも使ってみましたが、一番手馴染みがよく、出したい音が出せるのがゲームボーイでした。

時に、電子音は魂が込っていないなどと言われることがありますが、私はそうは思いません。むしろ、電子音って人間がいなかったら存在しえない尊い音。だから、私は、逆に強い生命力を感じます。

 

 ■ネット時代だからこそ、心に残るリアルを

今はフリーランスとして、すべてセルフプロデュースを?

はい。もちろん、たくさんの方の協力もいただいていますが、作曲からCDジャケットのデザイン、最近はアパレルまで自分で手掛けています。一言にアーティストと言っても、ただ音楽だけをやればいいわけではないと思うんです。アーティストのカラーは、アートワークやビジュアル、人間性などすべて含んで決まっていくもの。セルフプロデュースの方がまとまりのあるものができると感じて、今はそうやって活動しています。

でも、インターネットがなかったら、今のような活動はできていないと思います。これまで、アーティスト活動というのは、メジャーなレコード会社を通じてデビューしないと難しい業界だったと思うんです。でも、今は自分さえやろうと思えば、ネットを通じて自分の活動を世界中の人に広めることができる。 ’14年の夏、初めて『PULSE FIGHTER』という曲のミュージックビデオを作った時、YouTubeにアップロードしたんですが、プレスリリースなど出していないのに、口コミでPV数が伸びて、ヤフーニュースにも取り上げられて…。「良いものを作れば広がるんだ」とネットの力を強く感じました。

ただ、ネットが普及したことで、消費スピードも激しくなっています。どんどん消費されて、どんどん忘れられていく。ネットでライブ映像を見ると、実際には行ったことがなくても知ったような気になれるじゃないですか? でも、“リアルなもの”ってたしかにあると思うんです。だから私は、入り口はネットであっても、そこからなるべくリアルな場に持っていきたいと考え、曲をリリースする毎にCDを制作しています。データで管理できる世の中だからこそ、手で触れられる物は心に残るかなと、あえてCDにしているんです。

 

 ■ポップな表現の奥に人生を映したい

―TORIENAさんにとって、作曲活動とはなんですか?

私にとって、曲を作ることは日記をつけることと同じだったんです。昔から、自分の思いを言葉で表現するのが下手で、コミュニケーションが苦手でした。その分、絵や音楽など言葉以外の方法で日常に感じていたことを消化していた気がします。今でこそ、ライブ中にMCもできるようになってきましたが、初めはすごく緊張しました(笑)。言葉に表しきれない気持ちを音にして、大きいスピーカーを通じて、皆が踊ったり、リアクションを返してくれると、皆と会話ができているように感じるんですよね。

 

音楽で表現したい世界観とは?

生死に関することってグロテスクな部分もあると思うんですけど、そういうものを全部含めてポップに表現したいと思っています。一見、明るいんですが、その奥に人間の欲やクローズドな部分を感じられる作品を作りたいです。今回の新曲『POP NEGA POP』は、これまでの活動や自分の思いを詰め込んだ集大成とも言える曲。受け取り方はさまざまだと思いますが、楽しい時期、辛くて悲しい時期など、その人の人生のどこかに引っかかってくれると嬉しいです。

 

―最後に、今後の目標は?

チップチューンがエンターテインメントの1つとして、もっと気軽に興味を持てるジャンルになってほしいです。チップチューンは、「ゲームボーイが懐かしい」「8bitがレトロ」などと今はノスタルジーの面から取り上げられることが多いですが、これからの世代にとっては、全く新しい、カッコいいカルチャーになり得るものだと思うんです。直感的に、「チップチューンや8bitの文化ってエッジが効いてていいよね」という感覚を広めていきたい。私自身が入り口となり、チップチューンを聴いてくれる人がもっと増えていくと嬉しいです。

 

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ライブの様子。インタビュー中の真面目な表情とは一変した「かっこいい」姿のトリエナ

 

 

取材・執筆 / 高橋優紀

 

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